映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

『ペコロスの母に会いに行く』

絵本でも育児本でもなくて、いきなり育児から話が飛んで親の介護に関する漫画です。

「子育て真っ最中なんだから、介護なんて全く関係ないよね」、という人もいるかとは思いますが、初婚年齢&初産年齢もかなり上がっているので、たまに聞く話(主にママたちの声)では、子育てと介護が重なって大変だ、というもの。

僕の場合は、両親が高齢出産で僕を生んだものの、僕は結婚も子どもを授かったのも早かったので、まだ介護が差し迫ったものとしてはありませんが、それでも、親の「老い」をひしひしと感じるようになってきています。

ペコロスの母に会いに行く

この漫画、認知症になったお母さんが出て来ますが、描かれているのは、そのお母さんと自分(漫画家)との関係です。

なので、介護の辛さとかは殆ど描かれておらず、母を見つめる自分、あるいは自分を見つめる母の姿が温かな視線と筆遣いで描かれています。

認知症になったお母さんの世界では、自分が子どもだったときや、なくなったお父さんが今、目の前に生きています。

それらを「妄想だ」とか言って切り捨てることなく、「今」を生きてる中で、小さい頃の自分やお父さんが自然に出て来ています。

これを読んでいたら、「介護」とか「老いた母」とかではなく、「自分と親」あるいは「家族」というものを見つめずにはいられませんでした。

また、これは長崎に生きるこの世代の必然としての「原爆」が容赦なく入り込んでいて、最後の最後に直球で描かれていて涙せずには読めませんでした。