映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「とらわれて夏」

子どもたちは相変わらず保育園&学校は登園&出席停止ですが、少し落ち着いてきたので、先日観た映画の話です。

 

とらわれて夏 [DVD]

 

映画の内容ではありませんが、Amazonで探してみたら、なぜかまだ発売されていないにもかかわらず、値段が安かったです。

最初から投げ売り?な感じなのですが、そんなに悪い映画ではないと僕は思いました。

 

この作品も以前書いた「それでも夜は明ける」と同じように、原題と日本のタイトルがまるで違うので、映画の内容を違うように伝えている印象があります。

原題は「Labor Day」、つまり、労働者の日(9月第1月曜日=祝日)のことです。

 

レイバー・デー (アメリカ合衆国)-Wikipedia

 

日本では「とらわれて夏」とか意味の分からないタイトルがついていますが、これも思いっきり勝手に配給会社が映画を解釈したものです。

少なくとも僕は「とらわれて」はいないように思いました。

 

さて、Labor Dayについては、先に載せたWikipediaを参考にしてもらうとして、どのようなストーリーかというと、両親が離婚し、心を病んでいる母親(アデル)と一緒に暮らす少年(ヘンリー)の視点から、Labor Dayに出会った脱獄囚(フランク)と過ごした数日間が描かれます。

ヘンリー少年の目を通して描かれていますが、ヘンリーが知り得ない、脱獄囚フランクが何故刑務所で暮らすことになったのかを、細切れの回想を挟むことによって明らかにされます。

その細切れの回想が、母親アデルと交流を深めるごとに少しずつ入っていくので、元々心を病んでいるアデルが癒やされるだけではなく、フランクも過去の出来事を消化していっているという意味が含まれているように思います。

 

離婚し心を病んだ女性、そして、最初は怖がられていたけれど、実際にはぼろぼろになった家を修復し、車を整備し、隣人から沢山もらった桃でパイを作るなど、働き者の脱獄囚フランクがアデルの心までも治した、的な感じで捉えられてしまうかも知れません。

しかし、細切れに挿入されるフランクの過去の描写によって、彼もまた、そのような労働を行うことによって、数日間だけだとしても家族の一員として過ごすことによって、癒やされているのだと思います。

 

さて、この映画、フランクも好人物だし、アデルというかアデルを演じるケイト・ウィンスレットは「愛を読むひと」以来、陰のある女性をものすごく上手に演じています(手の震え方とか秀逸)。

だけれども、僕が気になったのは、心を病んだ片親の元で暮らす少年ヘンリーに与える母親アデルの影響です。

 

フランクと過ごして数日間に関しては、数日だけということもあって、割り切ることも出来るだろうし、逆に昇華することも出来ますが(実際に映画ではそのようになっている)、心を病み、そもそもすさんだ生活をしており、母親を【助ける】立場に早い段階に置かれた少年が、一時期その任から離れられたけれど、またさらに心を深く病んでしまった母親を直視しなければならない、という現実は相当厳しいものがあったでしょう。

それに、一時期母親を【助ける】役割から解放されたとはいえ、夜には母とフランクが交わっているのを耳にするわけで、それはある意味の性虐待とも言えます。

フランクが逮捕された後、養育者が父親に移り、父親の元で生活しますが、母親の呪縛からは溶けきれておらず、そのあとどうやって現在のような大人に成長したのかが描かれておらず、消化不良でした。

 

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)

★★★★☆

 

2014年に観た映画ランキング

1 「それでも夜は明ける」 

2 「そして父になる」 

3 「ネブラスカ」 

4 「小さいおうち」

5 「とらわれて夏