「ハンナ・アーレント」
クリスマスネタで世間はまだ盛り上がっているような気がしますが、先日観た映画の話題です。
タイトルそのままですが、哲学者ハンナ・アーレントの映画です。
僕は大学時代に哲学も一応少しかじったので、名前は当然知っているけれど、本は読んだことあったっけかな?と思い起こしてみたら、たぶんこれは読んだような気がします。
まぁ、でもあまり哲学者そのものの人生に興味を抱いたことはないので、ハンナ・アーレント自身がどのような人生を歩んでいたのかはよく知りませんでした。
映画の内容は、「ハンナ・アーレント」というタイトルになっていますが、彼女の生涯を2時間に収める、というものではなく、アメリカで著名な大学教授となっていた彼女がイスラエルで裁判を受けることになったアドルフ・アイヒマンの傍聴記事を書く経過、そして書いた後の反響を軸にしたものです。
途中に、学生時代に指導者であり不倫恋愛関係にあったマルティン・ハイデガーとの回想も含まれていますが、基本線はあくまでも、アイヒマン裁判の傍聴とその記事への反響と最終的にアーレントによる大学の講義内での反論です。
僕はユダヤ人でもなく、ユダヤ人がアイヒマンに関する憎悪もいまいち理解しづらい(ショアーは当然のことアイヒマン裁判も僕が生まれるかなり前の出来事ですし)かったので、なぜここまでアーレントが反発されなくてはならなかったのか、映画で描かれるそれらのシーンはあまり面白く感じられませんでした。
アーレントがアイヒマンの様子を観てニューヨーカー(雑誌)に書いた内容はその通りだと思うし、政治哲学者としてはとても的を射た表現だとも感じました。
なので、反発の様子が描かれれば描かれるほど、白けてしまうというか。。。
しかし、最後のシーンは圧巻でした。
反論することも出来ない(しない)状況にあったアーレントが普段いる大学生以外の多くの聴衆者を前に反論していきます。
そこで語られるのは「考えること」「考えつづけること」の意味です。
原発事故以降盛んに「思考停止」という言葉が交わされるようになりましたが、その「思考停止」の恐ろしさを明確に説いています。
で、ここでアーレントが喝破しておしまい、というハッピーエンドにはならず、学生らには受け入れられるものの、古くからの友人(ユダヤ人)らは気分を害し、絶縁してしまう、という状況に。
どんなに的を射たことを言っても、的を射ているからこそ周りの反発を食らってしまう、という人生のアイロニーが表現されていました。
そうそう、そんなにうまくいかないんだよな、と。
でも、それが何よりもこの作品の良さ(もちろんアーレント自身には大きな打撃だったでしょうが)になっているように思いました。
勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆
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