映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

『わたしが外人だったころ』

安保関連法案が明日にも採決される、というニュースが繰り返されています。

色々言いたいことはあるし、不安に思うことも、心配もつきませんが、こういう時だからか最近復刊した絵本があります。

 

わたしが外人だったころ (たくさんのふしぎ傑作集)

 

哲学者というべきか、思想家、あるいは編集者ともいうべき、鶴見俊輔さんが文を書き、それに(僕が大好きな)佐々木マキさんが絵を描いた絵本です。

 

鶴見さんは、16歳から19歳までアメリカにいて、戦争が始まったので、日本へ帰国し、軍人となり、病気のため帰国し、入院中に敗戦を迎えました。

 

その16歳のときから、戦争が終わるまでの回想文になっています。

 

「戦争は絶対に反対です」とか、そういうストレートな表現は全く出て来ませんが、その時代に戦争をした二つの国の間を行き交っていた人がどのように過ごしていたのか、どのように感じたのかがわかりやすく書かれています。

(といっても、絵本にしてはちょっと難しい言葉も出て来ますが)

 

僕が特に良いな、と思ったのは以下の文です。

ちょっと長いですが、引用してみます。

 

 どうして自分が生きのこったのか、その理由はわかりません。わたしが何かしたために、死ぬことをまぬかれたというわけではないのです。なぜ自分がここにいるのかよくわからないということです。そのたよりない気分は、敗戦のあともつづいており、今もわたしの中にあります。今ではそれが、わたしのくらしをささえている力になっています。

 

この「気分」が良いのかさえ、悪いのかさえ僕には判断が出来ませんが、でも、そういう「気分」をもたらしたということが語られること自体があまりないように思います。

こういう時だからこそ、手にとって読んでみたいな、と思う絵本です。