映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

9月に読んだ本(前編)

10月になったので、先月読んだ本について書いてみたいと思います。

今こうしてどれ読んだっけ?と思い出しながら書いていると、あんまり読んでいなかったことにちょっと愕然とした気分になっています…。

あと、今まで2回、こうして前月に読んだ本について書きましたが、一冊一冊に関して書く量が多すぎて、ちょっと疲れるので、今回はかなり一冊一冊について軽く触れていきたいと思います。

教育という病~子どもと先生を苦しめる「教育リスク」~ (光文社新書)

まずは、これです。

教育関係者、あるいは、子育て中の人、必読の書です。

著書の内田良さんは、柔道での死亡・重傷事故が多かったときから学校での事故に関して活発に発言していた名古屋大学の教員です。

学校内で起きる事故はどのようなものがあるのか、そしてその理由は何か、ということを(驚くことに)内田さんが初めて情報を整理し、可視化させました。

その結果、柔道事故は減り、2012年度から2014年度まで3年間は死亡事故が起きていません。

それが出来たのは、まず、事故があるということを可視化させ、原因を突き止め、その原因を排除し、予防するということが行われたからです。

柔道はうまくいったのですが、今でも、教育課程の中に組み込まれていない、運動会の組体操でのピラミッドなどでは死亡事故も高い確率で起きていて、背骨を折るなどの重傷&後遺症の残る事故が起きているにもかかわらず、それをやめようとしない現実にも触れられています。

(懸念されていたにも関わらず、また事故が起きてしまいました↓。

大阪・八尾市の中学校運動会で組み体操ピラミッド崩れ、6人けが(FNNNews))

また、大リーグのサンフランシスコ・ジャイアンツに所属している青木宣親が休養していることから話題になり始めた、脳しんとうについても、そのリスクと予防が詳細に書かれています。

日本ではとかく根性論がまかり通っていることから(羽生結弦選手が他の選手と激突したあとに結局は演技を続けたのは明らかに自殺行為でした)、まずは、事実を確認する意味でも大切なことが書かれていると思います。

AVビジネスの衝撃(小学館新書)

この本は、先月取り上げた、『ルポ 中年童貞』、『職業としてのAV女優』に続き、同じ中村淳彦さんの著書です。

どういう人がAV女優になるのか、ということやAVビジネスの実態を知ることは、以前読んだ『最貧困女子』につながる話かと思って読んでみました。

内容としては、『職業としてのAV女優』に重複する部分がかなりありましたが、『職業としてのAV女優』では伏せ字や仮名になっていた人物が実名(といっても芸名ですが)で載っていたので、『職業としてのAV女優』では、言っている人物が分からずどのくらい信憑性のなる話なのかがわからなかったものが、具体的な人物の言葉となり、読み手としても判断しやすくなりました。

が、『職業としてのAV女優』でも気になったのですが、現在のAVビジネスの危機的状況や、危機的状況だからこそ健全化してきたという状況を著者が目の当たりにしすぎているためか、先日も報道されていたAV出演を強要されたという人達の訴えには冷淡な記述になっていると感じました。

AV出演拒否で違約金迫られる被害相次ぐ

AVビジネスがいくら【以前と比べて】健全化しようが、AV出演を強要されるという事実はあるわけで、それを軽んじることは出来ないと思うのですが。

男子の貞操 ――僕らの性は、僕らが語る (ちくま新書)

この本は、確か、以前新宿の紀伊國屋書店かどこかで棚に並んでいるときに目にして「えっ!」と思ったので読んでみました。

「えっ!」と思った理由は、著者がホワイトハンというNPOの代表で、ホワイトハンズが設立された当初から知っていたからです。

ホワイトハンズというのは、「男性障害者への射精介助を行う」団体で、その活動内容からいろんな批判が浴びせられていました。

ホワイトハンズの活動や、ホワイトハンズへの批判に関して僕がどう考えているかはここでは書きませんが、ホワイトハンズの活動と『男子の貞操』というタイトルが不釣り合いのように感じたので「えっ!」と思ったのです。

それに、この『男子の貞操』と次にあげる『はじめての不倫学』が同じ著者の本として並んでいたので、ますます訳がわからなくて、両方とも読んでみることにしました。

はじめての不倫学~「社会問題」として考える~ (光文社新書)

『男子の貞操』については、著者はこの本が男性が性を語る「古典」になって欲しい、という意気込みで書いたようですが、この本よりは、哲学者(今年度から早稲田大学教授)の森岡正博さんの『決定版 感じない男 (ちくま文庫)』の方が思想的な深みというか、思考が深まっているように感じました。

『男子の貞操』の著書、坂爪真吾さんはもともと社会学を学んでいたようなので、アプローチが違うのは当然なのですが、「古典」となるには、あまりにも網羅的に表面を削っただけのように感じてしまいました。

けれど、電車内で見かける週刊誌の中高年向けの記事タイトルを見て(たとえば「60を過ぎても~」とか)、僕は嫌悪感を感じていましたが、実は「男性による射精至上主義、挿入至上主義」という抑圧なのでは、という考察があったりと、これには僕も確かにそうなのかもしれないな、と感じました。

決定的に女性の観点がない、ということだったり。

『はじめての不倫学』については、不倫というものを真面目に論じていて、当事者の話も多く盛り込まれていたので面白く読みました。

個人的には、旧約聖書に登場する主要な人物で妻としか関係を持っていないのはイサクだけとかの指摘は、そういう視点で読んだことがなかったので面白かったです。

始祖とされるアブラハム然り、「理想の王」とされるダビデ然り。

(イサクに関しても記述がないだけで、実際は分からないし、今ではキリスト教は一夫一妻制を堅持させようとしているにも関わらず、旧約聖書の特に世界の最初が書かれている『創世記』でそのような記述になっているのは、とても興味深いです。)

まぁ、でも、著者による、不倫へのワクチンとしての最終的な提案が、受け入れにくい内容だったので、賛否両論起きそうな気がします。

というか、具体例の1つが結局は、「関係を金で買ってんじゃん」って思う内容だったので、性風俗と何が違うのだろうか、と思ってしまいました。

ちなみに、決して不倫を勧める内容ではないのですが、この本を読んだ人の方が不倫に走りそうで、むしろ『男子の貞操』の方がパートナー以外との性的接触を避ける処方箋的意味があるような気がします。

(『男子の貞操』の方が、不特定多数との性的接触のリスクを冷静に判断できるような記述になっているため)

と、ここまで書いてやはり長くなってしまったので、明日後編を書きたいと思います。