「わたしは、ダニエル・ブレイク」
観てみたいな、と自分の「いずれ観る映画リスト」に入れておいたのですが、先日、いつも聞いている荻上チキさんと南部広美さんのラジオ番組で荻上さんがこの映画について語っていました。
荻上チキの映画評「わたしは、ダニエル・ブレイク」(ケン・ローチ監督)【音声配信】3月16日放送分(セッション22:TBSラジオ)
また、新聞にも作品の書評だけでなく、監督のインタビュー記事も載っていました。
働けど貧しい、だが屈しない ケン・ローチ監督「わたしは、ダニエル・ブレイク」(朝日新聞3月24日夕刊)
(評・映画)「わたしは、ダニエル・ブレイク」 権力への怒り、まっすぐに(朝日新聞3月17日夕刊)
これらのラジオを聞いたり、新聞記事を読んでいたらDVDになるのを待つより実際に観てみたいと思うようになりました。
公式サイトを見てみたら、都内の割と近いヒューマントラストシネマ有楽町で上映していて、水曜日はかなり安く観られるということだったので、水曜日を狙って見に行ってきました。
映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』公式サイト
作品データ
原題 I, Daniel Blake
製作年 2016年
製作国 イギリス・フランス・ベルギー合作
上映時間 100分
内容(公式サイトより)
イギリス北東部ニューカッスルで大工として働く59歳のダニエル・ブレイクは、心臓の病を患い医者から仕事を止められる。国の援助を受けようとするが、複雑な制度が立ちふさがり必要な援助を受けることが出来ない。悪戦苦闘するダニエルだったが、シングルマザーのケイティと二人の子供の家族を助けたことから、交流が生まれる。貧しいなかでも、寄り添い合い絆を深めていくダニエルとケイティたち。しかし、厳しい現実が彼らを次第に追いつめていく。
感想
この映画は、先進国という呼ばれる国で、現代に生きる人たち誰もが観るべき映画だと思います。
荻上さんの推薦コメント「イギリスだろうと、日本だろうと、いつもダニエルは僕らの隣にいる。ただ、僕らがまだ名前を尋ねていないだけだ。」という言葉の通り、この映画の舞台はイギリスですが、日本でも同じようなことが起きています。
制度の枠にはじかれ、どうにか自分自身を奮い立たせ懸命に生きようとしても、結局その制度の中では「意味のない行動」とされ、時には処罰さえされてしまう。
そして、制度の枠から排除されてしまうことで、ずるずるとより困難な状況になっていく。
貧困や格差ということを語る時、本当によく聞くのは「自己責任」という言葉です。
100%自己責任、と言い切る人はそこまで多くないかも知れませんが、「それでもその人に何かしら責任(原因)があるんでしょ」と考える人は少なくありません。
そんな風に思っているであろう多くの人に是非この映画を観て欲しいです。
僕は少しだけ野宿者(いわゆるホームレス)の方たちと関わらせてもらいました。
その人たちと接していたそのままの光景がこの映画には描かれているように思いました。
一つのあるきっかけで困難な状況になり、そしてどうにか生活を建て直したいと思って奮い立たせようとするも、どんどんと困難な状況になる。
最初は食事が満足に出来なくなり、水道高熱費などの支払いが出来なくなり、家賃も払えなくなる…。
そして、お金がなくなっていき、ものもなくなっていくうちに、どんどん自分の自信、人間としての尊厳がなくなっていく。。。
はっきり言って救いのない映画でした。
でも、ダニエルは最後まで【人間としての尊厳】を失わなかった。
だからこそ、ラストの結果をもたらす訳ですが、そこには尊厳を失ってもすがって生きるか、尊厳を保ち続けようとするか、という究極の選択が提示され、僕たちに真っ向から問いかけていました。
勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★★
2017年に観た映画ランキング
1 「わたしは、ダニエル・ブレイク」 / 2 「さとにきたらええやん」 / 3 「この世界の片隅に」 / 4 「ドラッグ・ウォー / 毒戦」 / 5 「シチズンフォー スノーデンの暴露」 / 6 「帰ってきたヒトラー」 / 7 「SING/シング」(日本語吹替版) / 8 「奇跡の教室」 / 9 「ミッドナイト・イン・パリ」 / 10 「神様の思し召し」
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