「ロゼッタ」
先日、『わたしはダニエル・ブレイク』を観に行った際、「午後8時の訪問者」という作品の予告編が流れました。
予告編を観てこの作品に少し興味を持っていたら、その後新聞で監督のダルデンヌ兄弟のインタビューを読み、ますます興味が沸きました。
はじまりは小さな過ち ダルデンヌ兄弟監督「午後8時の訪問者」 映画大好き!(朝日新聞2017年3月31日)
でも、劇場で観るには僕にはもういろいろと余裕がないな、ということで、TSUTAYAディスカスがまた旧作50円(税抜き&送料別)だったので、借りられるダルデンヌ兄弟が監督した作品を借りてみることにしました。
ということで、前振りが少し長くなってしまいましたが、今回観た作品は、借りたダルデンヌ兄弟の監督作品のうち、一番初期のこの作品です。
作品データ(映画.comより)
原題 Rosetta
製作年 1999年
製作国 ベルギー・フランス合作
上映時間 93分
ストーリー(映画.comより)
酒びたりの母親とキャンプ場のトレーラーハウスで暮らす少女ロゼッタは、ある日突然、何の理由もなく工場での仕事をクビになってしまい、新しい仕事を探しはじめるのだが……。
感想
1999年公開の映画ですが、(もちろん着ているものや、持ち物などのスタイルは変わっていますが)古びることのない内容でした。
貧しい暮らしをし、トレーラーハウスで、アル中でたまに売春している母親と二人で暮らすロゼッタ。
どうにかありつけた仕事も解雇され、必死にしがみついても結局情況は変わりません。
家の近くのキャンプ場で自作の仕掛けで鱒を手に入れ、なんとか食いつないでいくような情況。
リケという青年に出会い、仕事にもありつけたかな、と思ったけれど、やはりそれもすぐに終わってしまいます。
そこでもなんとかしがみつこうとするけれど、やはりうまくいかず、人を陥れることによってようやく仕事を手に入れる。
だけどそうやって人を陥れることにも何か考えることがあったのか、自分から仕事をやめてしまう。
僕は自己責任とか、努力すればなんとかなるという言葉が好きではありません。
それは、むしろこのロゼッタのような、「せっかく好転しそうなのに結局破滅に自ら向かってしまう」という生き様の方が身近に感じられるからです。
破滅的だと分かっていても、でももうどうすることも出来ない。
何度も何度も足蹴にされ、否定され、拒否され、排除されてきたので、今目の前に大きなチャンスがあるよ、と言われても「もう無理だ」と思ってしまう。
傍から見れば、それは努力をしていない、と思うのかも知れませんが、頑張ればなんとかなるのに、とか、何とかなるのにそれをしない自分が悪い、ということになるのかも知れませんが、生きるとは「積み重ね」なのだ、と思います。
今までに1回しか、足蹴にされたり、否定されたり、拒否されたり、排除されたりしたことのない人には、チャンスに挑戦する勇気がわくかも知れない。
でも、今まで100回も足蹴にされたり、否定されたり、拒否されたり、排除されたりしたことのない人には、目の前のチャンスがもはやチャンスには見えないのです。
それはチャンスではなく101回目になるかも、という不安、恐怖、おびえを招くものなのです。
だから、101回目が来るかも知れないのなら、もう何もしない方が良い。
それを傍から見た人は、あいつは挑戦すらしない、と判断し、自己責任だと断じるのです。
主人公のロゼッタはあまり話もしないし、それよりも歩いていたり、走っていたりすることの方が多く、何を考えているのか、何を思っているのかはよく分かりません。
でも、唯一救われるような気がしたのは、日本でもセーフティネットの役割を担っている性を売って生きるという場面が出てこなかった点です。
でも、それも単に描かれていないだけで、このあとのロゼッタを描くならば、ロゼッタの母親がしていたように売春して稼ぐということになるのかも知れません。
勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆
2017年に観た映画ランキング
1 「わたしは、ダニエル・ブレイク」 / 2 「さとにきたらええやん」 / 3 「この世界の片隅に」 / 4 「ムーンライト」 / 5 「あまくない砂糖の話」 / 6 「ドラッグ・ウォー / 毒戦」 / 7 「シチズンフォー スノーデンの暴露」 / 8 「帰ってきたヒトラー」 / 9 「SING/シング」(日本語吹替版) / 10 「奇跡の教室」
11 「ベティ・ブルー」 / 12 「ミッドナイト・イン・パリ」 / 13 「神様の思し召し」 / 14 「her/世界でひとつの彼女」 / 15 「マグノリア」 / 16 「プリズナーズ」 / 17 「if i stay」 / 18 「ハドソン川の奇跡」 / 19 「ラ・ラ・ランド」 / 20 「しあわせのかおり」
21 「REDリターンズ」 / 22 「 愛しき人生のつくりかた」 / 23 「ディーパンの闘い」 / 24 「プリデスティネーション」 / 25 「花様年華」 / 26 「EDEN/エデン」 / 27 「17歳」 / 28 「愛とセックス」(Sleeping With Other People) / 29 「後妻業の女」 / 30 「ロゼッタ」
31 「あと1センチの恋」 / 32 「海難1890」 / 33 「ホテルコパン」 / 34 「聖の青春」 / 35 「ロング・トレイル!」 / 36 「ワールド・ウォーZ」 / 37 「惑星のかけら」 / 38 「麦子さんと」 / 39 「超高速!参勤交代 リターンズ」 / 40 「カケラ」