映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

『〈喧嘩とセックス〉夫婦のお作法』

先日、発売前から知人たちが、普段は教育や育児について記事や本を書いているおおたとしまささんが夫婦についての本を出すということを話題にしていました。

僕自身もおおたさんの記事はいくつか読んだ事があり、本は『男子校という選択』くらいしか読んだ事がありませんが、興味が沸いたので読んでみました。

<喧嘩とセックス>夫婦のお作法 (イースト新書)

タイトルがあまり良くないな、と思うのは、特に「セックス」については最初にちょっとだけ触れられているだけなので、内容とマッチしていないということと、このタイトルから敬遠する人もいると思われる点です。

内容は、重点が置かれていたのは、近年話題になり、妻vs夫という構図で固められてしまった「産後クライシス」についてで、その中身を丁寧に読み直そうとしていています。

たとえば、「産後クライシス」は「配偶者といると本当に愛していると実感する夫」と「配偶者といると本当に愛していると実感する妻」との差が17%もあることや、夫も妻も子どもが生まれ子どもの年齢が上がるにつれて愛情を感じる人が少なくなっていき、少なくなるのは妻に顕著であるということが問題だとされています。

妻の方が夫に愛情を感じにくくなっていき、夫との差が大きく広がっていく。

だから、夫よしっかりしろ、というメッセージが伝えられるようになりました。

でも、このアンケート結果を違う視点で見ると、より深刻なのは、子どもが2歳児になると、「配偶者といると本当に愛していると実感していない夫」が50%近、、「配偶者といると本当に愛していると実感していない妻」が65%近くいること。

夫を悪者にするだけでなく、じゃあ何故愛情を感じなくなってしまうのか、ということを読み解こうとしている点で好感が持てました。

他にも「家事ハラスメント」(家事ハラ)について書かれていたところでは、こんな文章もありました。

そもそも相手がこちらの思い通りに動いてくれないからと失望して、怒り、それを相手のせいにするというのは大変大人げのないことです。相手に期待して、その結果に一喜一憂するということは、自分の感情を相手に預けてしまっているということです。自分の感情を相手に依存してしまっているということです。自律的ではありません。

(中略)

夫婦に限らず、人間関係の悲劇の多くは、相手に期待しすぎることで起こります。

自分の期待に応えられなかった相手に失望し、それが怒りに変わり、その怒りが相手にも伝わり、対立構造が深まってしまうのです。

赤の他人との間にはこのような葛藤は生じません。お互いに期待する関係だから生じる問題です。特に夫婦においては避けられない問題です。

この指摘はもっともなことで、相手(パートナー)に期待しているからこそ、それを裏切られたと感じたり、失望したりしてストレスがたまってしまいます。

それを「大人げない」と言われてしまうと元も子もないですし、相手を少しでもコントロールしようとしていることを自覚してもいるのですが、それでも共同生活をしている限り、自分のことは自分でやって欲しいと思ってもしまいます。

この点についての対策・対処についても述べられてはいたものの、おおたさんが書いている事を2人ともが理解し、しっかり話しあったりすることが出来れば可能かも知れないけれど…、とかなり良好なコミュニケーションが取れていないと難しいのでは、と思ってしまいました。

この本の中で僕の気持ちが少し軽くなったのは、この文章でした。

ノルウェーでは夫が食事の支度をするのは当たり前なのですが、その定番料理ナンバーlワンが、なんと冷凍ピザなのです。ノルウェーイクメンが食事の支度をしているといっても、レンジでチン! しているだけなのです(全部が全部じゃないでしょうけれど)。それでも「うちのダンナはよく料理をしてくれる」と妻から認めてもらえるわけです。

ベルギーのイクメン夫婦からも似たような話を聞きました。よく夫が料理を作るのですが、レパートリーはパスタとサラダだけ。ソースとドレッシングの味つけを変えているだけです。パスタっていうと聞こえがいいですけど、要するに麺を一O分やそこらゆでて、ソースを絡めるだけです。

時々こういう文章を読んで、僕は自分の家事に対する基準をリセットしています。

特に料理に関しては、他の家事よりも自分で水準を高めに設定してしまいがちで(もちろん料理が苦にならず、割とすきだということがありますが)、昨日も割と忙しいのに3品も作ってしまいました…。

昨年末にも料理研究家の土井善晴さんが、「一汁一菜でよい」ということを伝える記事(「一汁一菜でよいという提案」 土井善晴さんがたどりついた、毎日の料理をラクにする方法)を読みましたが、土井さんの記事では自分の料理の水準をリセットしようと思い、今回のこの本では我が家のイクメンであるツレにはあまり期待しすぎないようにしないとと思ったのでした。