「彼らが本気で編むときは、」
映画「彼らが本気で編むときは、」 公式サイト
作品データ(映画.comより)
製作年 2017年
製作国 日本
配給 スールキートス
上映時間 127分
映倫区分 G
ストーリー(公式サイトより要約)
小学5年生のトモは、荒れ放題の部屋で母ヒロミと二人暮らし。ある日、ヒロミが男を追って姿を消す。ひとりきりになったトモは、叔父であるマキオの家に向かう。母の家出は初めてではない。ただ以前と違うのは、マキオはリンコという美しい恋人と一緒に暮らしていた。
キレイに整頓された部屋でトモを優しく迎え入れるリンコ。食卓を彩るリンコの美味しい手料理に、安らぎを感じる団らんのひととき。母は決して与えてくれなかった家庭の温もりや、母よりも自分に愛情を注いでくれるリンコに、戸惑いながらも信頼を寄せていくトモ。その姿にリンコも愛おしさを覚え始める。
悔しいことがあるたび、編み物をして心を落ち着かせてきたリンコオ。そして今は、とある目標に向かい、"煩悩"を編み続けている。やがて"煩悩"作りには、マキオとトモも参加するようになる。
本当の家族ではないけれど、3人で過ごす特別な日々は、人生のかけがえいのないもの、ほんとううの幸せとは何かを教えてくれる至福の時間になっていく。このまま永遠に続くように思えた3人の関係だが、突然、ヒロミが帰ってくる―
勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆
感想
この作品は劇場で公開される前から知っていて、映画館で観ようか迷ったのですが、結局映画館に観に行くことなく、レンタルが出来るまで待っていました。
映画が後悔された頃、NHKのハートネットTVに監督や映画の出演者たちが出演されていた放送があり、そちらもとても良かったので楽しみにしていました。
LGBTを “当たり前” に 映画監督・荻上直子と語る(ハートネットTV)
公式サイトにはかなり詳しくストーリーの内容が書かれていますが、触れられていないのが、主人公トモの同級生カイの存在です。
クラスメイトのカイとその母親の存在はこの物語では欠かせない存在で、それは是非実際に映画を観てもらいたいと思います。
僕がこの映画を観て一番気になった存在はカイで、この子がどのような気持ちになっているのか、何を考えているのか、がとても気になりました。
カイの母親は、簡単に言えば、リンコを触れてはいけない存在、タブーであり、汚れたものとして扱おうとします。
あまりにもストレートなので、その行為には嫌悪感を覚えますが、ふと立ち止まって、自分はこういうこと(タブーな存在としていないいか?)を見つめ直すきっかけにもなりました。
ある時、同じ車両に、女性装をしていた方がいました。
その方はトランスジェンダーなのかもしれないし、性に関係なく、女性装をしているだけかも知れない。
でも、そういう風にその方が「何故女性装をしているのか?」を僕が勝手に想像すること自体が、僕がその方を少なからず「おかしな存在」だと考えているということなのではないか、と思いました。
僕の服装をじっと見て、「何故そんな格好をしているのか?」と想像する人は殆どいません。
でも、僕はその方にその格好をする理由を考えてしまった。
そのこと自体がすでに、その方を「異なる者」としてしまっているということなのだと思います。
女性装をしているから気持ちが悪いとか、不快だとかいうことは全くありませんが、それでも僕がその方を異なる存在として捉えているという自分の意識自体に戦きました。
映画の公式サイトでは「トランスジェンダー」と書かれていますが、映画の中では、リンコの存在に名前を付けません。
リンタロウとして過ごしていたけれど、リンコとして生きたいと願ったこと、リンコとして生きると決めたこと、リンコとして生きていること、それらが描かれます。
それはリンコであって、「トランスジェンダー」として生きるということとは違います。
そのトランスジェンダーという名前がないところが、リンコを異なる存在としないところが僕にはとても重要なことに感じました。