映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

『ギャングース』

以前から気になっていた漫画がkindleで1巻目が無料だったので、読んでみたらはまってしまいました。

 

 ギャングース(1) Kindle版

 

この作品は鈴木大介さんの『ギャングース・ファイル 家のない少年たち (講談社文庫)』(元は単行本『家のない少年たち』)に出てくる話をもとにしたフィクションで、ストーリー共同制作者として鈴木さんも関わっています。

 

鈴木さんの著書は『最貧困女子』(紹介した記事)、『家のない少女たち』、『最貧困シングルマザー』の三冊を読んだことがあり、いわゆる「貧困」を主題にしたルポ、インタビューに基づいた本をたくさん書いています。

 

この感想を書こうと思って少し調べてみたら、今年の秋に実写映画が公開されるようです。

映画『ギャングース』

 

掲載誌の「モーニング」ホームページにはこのように紹介されていました。

生まれた時から親に虐待され続け、ろくに学校も行けずに青春期を少年院で過ごしたカズキ・サイケ・タケオの3人は、生き抜くために犯罪者だけをターゲットにした“タタキ”稼業を開始した! 3人の“生”への挑戦が今、始まる!!! 最大限に実話を基にした“超実証主義”漫画。

 

この『ギャングース』が出来るきっかけとなった『家のない少年たち』は読んだことがないのですが、ストーリー共同製作の鈴木さんが、漫画の端々に言葉や状況の説明を書いていたり、実際に取材で出会った漫画に出てくるような状況にいる人たちのことについて詳しく解説を書いています。

 

なので、この漫画に出てくるカズキ、サイケ、タケオ自体や、起こる出来事もこの3人が主人公だからこそ起きる展開もフィクションだとわかる内容なのですが、多くの取材者の現実を反映しているからこそ、「こんなことがあるわけがない」と切り捨てることが出来ないリアルさ、読む者に目を背けたくなるような、苦しくなってしまうような現実を読む者に迫ってきます。

 

2000年代に入るまで、自分がまだ小学生くらいまでは、かろうじて暴走族がまだ「不良」と呼ばれる少年少女たちの受け皿になっていて、その後には暴力団という流れが合ったと思うのですが、現在ではそう簡単な構図ではないこと、そして、生育歴においての経済状況がその後の人生にかつてないほどの影響を与えていること、「更生」しようにも受け皿がないこと、などが、とてもリアルに示されているように思います。

 

鈴木さんの著書はどれも、二極化するこの社会、日本にあって、目を背けてはいけない、しっかりと向き合わないといけない現実を常に示している良書だと思うのですが、活字が少し苦手という人や、とっつきやすいという点でも、この漫画を読んでみて欲しいと思います。