「私の中のあなた」
なんとなく、敬遠していましたが、Amazonでの評価が高かったので、観てみた映画です。
作品データ(映画.comより)
原題 My Sister's Keeper
製作年 2009年
製作国 アメリカ
配給 ギャガ
上映時間 110分
ストーリー
アナ・フィッツジェラルドの姉ケイトは2歳のとき、急性前骨髄球性白血病を患う。しかし両親や兄の白血球の血液型であるHLA型は、ケイトと適合しない。ドナーを必要とするケイトのために、受精卵の段階で遺伝子操作を行ない、デザイナーベビーとして生まれてきたのがアナであった。
まずはドナーへの負担がない臍帯血移植を行うが、その後もケイトが輸血や骨髄移植などを必要とするたびに、幼いアナは過酷な犠牲を強いられてきた。13歳を過ぎたアナは、ついに片方の腎臓の提供を求められる。ところがアナは提供を拒み、辣腕弁護士キャンベルを雇い、両親を相手取って訴訟を起こす。
勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★★
感想
すごく良かったです。
原作が小説だったようで、日本でも翻訳が出されています。
僕が敬遠していたのは、「私の頭の中の消しゴム」と混同していたからで、記憶がなくなってしまう主人公の話なのではないか、あと、主演の1人であるキャメロン・ディアスはどうしてもコメディ映画のイメージが強く、シリアスな映画には向かないのではないか、とようは食わず嫌いをしていました。
が、レビューの評価が高く、プライム対象だったので観てみたのですが、とても良かったです。
まず、キャメロン・ディアスの娘アナを演じていて同じく主役である、アビゲイル・ブレスリンの演技が良かったです。
どこかで観たことがなるなぁ、と思っていたら、注目を浴びた「リトル・ミス・サンシャイン」ではなく、「幸せのレシピ」の印象が残っていたように思います。
とにかく、アビゲイル・ブレスリンが白血病の姉を思いながらも、母に反抗する娘、そして自分の身体を大切にしたい1人の人間という役を、それらに乖離や極端な繊細さを見せることなく、あくまでも自然に演じている(ように見える)のが印象的でした。
キャメロン・ディアスは長女ケイトを最優先に考える母親を演じているのですが、彼女の行動も娘を思う気持ちとしてはあり得ないものでもない、と感じさせます。
最終的に、アナの行動はすべてケイトの意思を尊重するがため、ということがわかるのですが、この映画で一番驚いたのは、身体的にかなりの負担を強いるドナーという役割を、たとえ子どもであっても、本人の明確な意思を確認せずに親(保護者)の意思が最優先される、という点です。
物語の舞台はアメリカ西海岸。
「保守的」と言われる地域なら、まだ理解出来たのかも知れませんが(でも、「保守的」と言われる地域だと、デザイナーベビーなど考えられないかも)、西海岸で、しかも劇中では決して保守的とは思えない家庭にあって、子どもの明確な意思も確認しないで、ドナーにするという点が、アメリカでもこんなことがあるのか、と衝撃を受ける内容でした。
アナや闘病中のケイト、そして、母親のサラに焦点が当たりつつも、他の家族がどのような思いを持っているのか、を映していたのもとても良かったです。
たとえ家族であっても、それぞれが闘病中のケイトを大切に思いながらも、サラがケイトを最優先に考え行動する、というその思いを理解しつつも、それでもそれぞれの思いがある。
それぞれはそれぞれの人生の中心であり、だからこそ、大切に思っていても、割り切れない思いや、誰かに大切にして欲しいという思いがある。
この点をストレートではないかも知れませんが、それぞれに焦点を当てる場面を作ることで、観る人たちに伝えている点がとても良かったです。
これは、明確に時間を区切って示される家族のメンバーだけでなく、アナの弁護士であるテイラー、裁判の判事デ・サルヴォにも当てはまります。
それぞれがそれぞれの人生を生きていて、それぞれに起きた出来事、事情を抱えている。
一見、涙を誘うようなストーリーでありながら、最終的に闘病の結果、死をむかえるとしても、ニヒリズムに陥ることなく、それぞれの人生を生きていっている、という点に最後まで焦点が当たっている、それが素晴らしかったです。