萩原慎一郎『歌集 滑走路』
今まで短歌というものに学校での国語の授業以外では触れたことがなかったのですが、ものすごく興味を惹かれて、歌集を手に取りました。
2月に朝日新聞で著者のことが書かれていて、その記事を読み、(とても安易な理由だとは思うのですが)自分と同じようなことを考えていたのではないか、と思いました。
共通点のようなものをあげれば、性別や年齢が近いこと、また、学歴のようなもの、そして、非正規であったということ、そして、自死であった、ということ。
僕は自死はしていませんが、精神的な不調と付き合って長く、自死をしようとした経験は何回もあります。
同時に、共通しない点をあげれば、僕は学校で同級生たちからいじめられたことはなく、結婚もし子どもも授かっていたし、短歌など創作をしてもいない。
それでも、この記事にあった、萩原慎一郎という人が、同じような思いを抱いていたのではないか、と僕は思いました。
そして、実際に歌集をゆっくり読んでいると、心の中にある思いをそのまま表現されたような短歌がいくつも載っていました。
朝が来た こんなぼくにもやってきた 太陽を眼に焼きつけながら
あのときのこと思い出し紙コップ潰してしまいたくなりぬ ふと
ぼくも非正規きみも非正規秋がきて牛丼屋にて牛丼食べる
この歌集には300首弱の短歌が収められています。
上に書いたような、僕の心にずしんと響いてくるような短歌ももちろんあるのですが、それらの300首弱の短歌全体を読むと、いかに著者が生きようとしていたか、生きるために短歌を残そうとしていたのか、ということが伝わってきます。
自分自身のおもいを言葉にする、ということはとても難しいものです。
そして、その言葉を誰かに伝える、ということはもっと難しいことです。
その2つのことを、この歌集では疑うことなく成し遂げているように思います。