映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「万引き家族」

久しぶりに映画館に行って映画を見てきました。

映画館で映画を観るのは、4ヶ月前くらいの「デトロイト」以来です。 

節約もあって映画館で映画を観ようという気持ちはなかったのですが、前日実家に泊まり、次の日の夕方から用事があったので、それまで何をしようか考えていた時に、久しぶりに映画館で映画を観てみようと思ったのでした。

 

そして、映画を観てみようと思ったのは、実家で夕食を食べていたときで、ちょうど、ニュースで、一家で万引きを繰り返していた家族の話がやっているときでした。

家族4人を万引き容疑で逮捕 圧力鍋など5万円相当:朝日新聞デジタル

 

このニュースに対しての兄のコメントがかなり引っかかる内容で、「そうだ、『万引き家族』を観に行こう」と思いました。

 

youtu.be

 

是枝裕和監督 最新作『万引き家族』公式サイト

 

作品データ映画.comより)
製作年 2018年
製作国 日本
配給 ギャガ
上映時間 120分
映倫区分 PG12

 

あらすじシネマトゥデイより)
治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は万引きを終えた帰り道で、寒さに震えるじゅり(佐々木みゆ)を見掛け家に連れて帰る。見ず知らずの子供と帰ってきた夫に困惑する信代(安藤サクラ)は、傷だらけの彼女を見て世話をすることにする。信代の妹の亜紀(松岡茉優)を含めた一家は、初枝(樹木希林)の年金を頼りに生活していたが……。

 

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)

★★★★☆

 

感想

僕が観たのは、平日昼間の池袋の映画館で、台風が近づいている時だったのですが、それでも席のほとんどが埋まっていました。

大学生くらいのカップルから、年配のひとまでいる、客層の幅が広い感じがしましたが、カンヌ映画祭パルムドール受賞効果が大きいのかな、と思います。

 

物語として、すごく難しい箇所だったり、わかりづらい箇所があるわけではないのですが、家族って何なんだろうか、幸せって何なんだろうか、と自分の中で考え続ける、というか、モヤモヤするというか、消化するのが時間がかかる映画でした。

 

事前にいくつかの映画評を目にしていて、一番気になる記事は作家の角田光代さんが書いたものでした。

正しさの陶酔、揺さぶる「万引き家族」 角田光代さん:朝日新聞デジタル

 

この文章から、女の子が妹になるということはわかっていたのですが、後半の展開は知りませんでした。

僕にとっては予想外の動き、反応をそれぞれの家族がしていくことになるのですが、やはり印象的だったのは、「正しさ」とは違う軸で生きている人たちがいる、という現実です。

それは、角田さんの文章で言えば以下のものになります。

 

しいたげられる痛みを知る者だけが発信・感知できる、言葉に拠(よ)らない暗号を、彼らは共有している。また、その痛みを知る者だけが持ち得る強さで、彼らは彼らを支え合っている。それは善意でもないし正義でもない。同情ですらない。彼らには、他者を「助けている」という意識もない。ただ本能的に、手をのばしてしまうだけだ。

 

そして、この文章に加えて映画が突きつけるのは「正しさ」というのは大きな「力」を持っているという現実です。

「正しさ」を突きつけられたとき、それに抵抗するのはとても難しく、「正しさ」に打ちのめされてしまう。

けれど、その「正しさ」が「幸せ」をもたらすかというと、それはわからないし、むしろ逃げたかった情況に戻してしまうかもしれない。

 

自分自身が、夫婦別姓を望み、それが夫婦間での大きな溝となって、家族が崩壊したことに対し(「夫婦別姓」選べず離婚…司法が掲げる「家族の一体感」って何? - withnews(ウィズニュース))、相変わらず「家族は同姓が当たり前」「親子は同姓が当たり前」という、他人からの「当たり前の家族像」を突きつけられてきた、ということが大きいからかも知れませんが、家族とは何だろうか、と考えるとても良い映画だと思いました。