レベッカ・ブラウン『体の贈り物』
バイトへの通勤時間が往復2時間ほどあるので、以前よりも割と読書をする時間が増えました。
電車に乗っているとスマホでゲームをしたり、SNSをしている人をよく見かけますが、僕の場合は、家族と暮らしていたときの方が隙間時間が短かったのでゲームをしていましたが、今は隙間時間が長くなったので、逆にゲームやSNSから離れて読書になりました。
ということで、積読していた小説を少しずつ読んでいます。
訳者:柴田元幸
内容
食べること、歩くこと、泣けること……重い病に侵され、日常生活のささやかながら、大切なことさえ困難になってゆくリック、エド、コニー、カーロスら。私はホームケア・ワーカーとして、彼らの身のまわりを世話している。死は逃れようもなく、目前に迫る。失われるものと、それと引き換えのようにして残される、かけがえのない十一の贈り物。熱い共感と静謐な感動を呼ぶ連作小説。
勝手に五段階評価
★★★★★
感想
短編の連作小説で、全体としてつながりがある作品になっています。
この小説は、とにかく良かったのですが、正直、その良さが伝わるかというと、とても難しいと思います。
それは、柴田元幸さんが訳者あとがきで書いている文章がとても的確に表しているように感じました。
訳した本はどれも、届くべき読者に届くことを祈りつつ世に送り出すものだが、こ
の本はいつにも増して、熱く祈りたいと思う。たぶんそれは、この本が、「とにかく読んでもらわないと魅力がわかってもらえない」本だということだと思う。むろん、つきつめて言えばどんな本だってそうなのだけれど、この本の場合は特に、その魅力を一口で伝えるのが難しい。
なぜ伝えるのが難しいのかというと、内容を要約すると、魅力が半減してしまったり、あるいは、その要約で一定の人たちを遠ざけてしまうだろうからです。
では内容をいざ要約すると、「エイズ患者をケアするワーカーの『私』がその日常での出来事を語る」というものです。
ケア・ワーカーなので、必然的に生や死、そして病というものが出てきますし、その現実に対しての様々な人たちの様々な反応(それは個人の違いでもあるし、個人においても情況においての違いもある)、それに関わる「私」の揺らぎが描かれています。
その生や死、病という言葉が出てきた時点で読むのをやめようという人も居るかと思います。
けれど、この作品の良さは、「私」がとても淡々と語っているところです。
もちろん「私」も現実や人間関係から揺らぐこともあるのですが、ケアをするということが「私」の日常だからこそ淡々と語られているように感じました。
とにかく、どの一篇でも良いから読んで欲しいなと思う作品です。