映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「キングダム 見えざる敵」

Amazonでの評価が高かったので観てみました。 

 

キングダム 見えざる敵 (字幕版)

 

作品データ映画.comより)
原題 The Kingdom
監督 ピーター・バーグ
製作年 2007年
製作国 アメリ
配給 UIP
上映時間 110分
映倫区分 R15+

 

あらすじシネマトゥデイより)
父母参観日に出席中のFBI捜査官ロナルド(ジェイミー・フォックス)の元に、サウジアラビア自爆テロ事件が発生したと知らせが入る。彼は法医学調査官のジャネット(ジェニファー・ガーナー)や、爆発物専門家のグラント(クリス・クーパー)らとともに事件の調査を開始。しかし、FBIの捜査を拒むサウジ政府との交渉は難航し……。

 

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)

★★★★☆

 

感想

この映画の物語自体はフィクションなのですが、最初に起きる無差別銃撃事件とその後の爆発事件はどちらも実際に起きた事件を基にしています。

 

Khobar Towers bombing - Wikipedia

Riyadh compound bombings - Wikipedia

 

どちらの事件でも沢山の人が殺されていますし、2000年代に入ってからこのようなキリスト教圏や非イスラームを標的にした事件が多発しているとしても、アメリカ人にとっては、衝撃的な事件だったのではないかと思います。

 

その2つの実際にあった事件を物語の舞台であるサウジアラビアということも同じにして映画にした、ということは、映画の中で描かれるアメリカでも簡単にはサウジアラビアには介入できないという事実を踏まえると、勇気のいる行為なのではないかと思います。

 

FBI捜査官であっても、同僚の捜査官が犠牲になったとしても簡単にサウジアラビアに渡ることが出来ないこと、少数で限られた時間のみで捜査することになること、けれども結果的には、「主犯」を見つけるという流れは、「殺された」側の視点に立てば、爽快とは言わずとも、ほっとする終わり方だったのではないかと思います。

 

そこで終わっていたら、僕はもやもやしたものを抱えていたと思いますが、ラストの台詞がとてもリアルな現状、どうしようもない現状を表していて、暗澹たる気持ちにもなりますが、この作品を単に「正義の側に立った悪に打ち勝つ者たち」だけの視点ではなく、他の視点、相手側の視点があることも同時に提示していて、とても良かったと思います。

 

殺された事実は変わらないし、犯した罪は償われなければならない。

けれども、それを「死」や「暴力」だけに求めるとしたら、この循環が繰り返されるしかない。

この映画は2007年に公開されたものですが、その後の10年を考えると、とても示唆的な映画でもあると感じます。