映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「ヴィンセントが教えてくれたこと」

Amazonでの評価が高かったので観てみた映画です。
ダウンロードしたまま放っておいたのですが、その理由は、表紙からだと物語が全く分からなかったこと、そして、誰が出ているのか(知っている人が出ているように見えなかった)分からなかったからです。
 

ヴィンセントが教えてくれたこと(字幕版)
 
youtu.be

 
映画「ヴィンセントが教えてくれたこと」公式サイト
 
作品データ映画.comより)
監督セオドア・メルフィ
原題 St. Vincent
製作年 2014年
製作国 アメリ
配給 キノフィルムズ
上映時間 102分
映倫区分 G

ストーリー(公式サイトより)
アルコールとギャンブルに溺れるちょい悪オヤジのヴィンセントは、ひょんなことからお隣に引っ越して来た、いじめられっ子オリバーの面倒を見ることになる。小学生相手に容赦なく毒舌を連発し、行きつけのバーや競馬場にも連れ歩き、ヴィンセントはオリバーに注文の仕方、オッズの計算方法、いじめっ子の鼻のへし折り方など、一見ろくでもないことを教え込んでいく。最初は最悪だと思っていたオリバーだが、ある日ヴィンセントが介護施設に立ち寄り、認知症の妻に愛おしげに接する様子を目の当たりにする。気難しい老人と気弱な少年の間にはいつしか奇妙な友情が芽生え、2人のささやかな冒険の日々が始まった―――。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
知っている人が出ていないと思っていたのですが、ヴィンセントを演じているのが、「ゴーストバスターズ」でおなじみのビリー・マーレイでした。
僕にとっては今でも「ゴーストバスターズ」の印象が強いのですが、すごく良い意味で、ダメな中年男を演じています。
お腹の出具合含めた太り方とか、無精ひげとか、まさにはまり役です。

初っぱなから酒に酔って車を運転し、ボロボロの家の中で倒れてけがをし、引っ越してきた隣人には悪態をつく。
でも、歓迎はしないけれど、家に入れず母の帰りを待つオリヴァーを家に上げ、決しておいしそうとは思えない缶詰の食事も提供する。

周りの人がヴィンセントは人のことを嫌っている、と見ているけれど、それを言っている周りの人は、なんだかんだでヴィンセントの良さを知っているし、だからこそ微妙な距離感を取りつつ、彼との関係を保っている。

一見、誰にでも違う面から見れば、良いところも悪いところもある、とか、すごく悪いことをしているように見えていたけれど、実はそれには理由があって、とかそういう話かな、とも思ったのですが、ヴィンセントは、決して「悪いところ」は見えません。
悪態はつくけれど、弱いものいじめをされている人物がいたら戦っていくし、認知症の妻のためには尽くす。

それは、違う表現でいえば、ぶっきらぼうなだけなのだと思います。
ギャンブル依存症っぽくはありますが。

ヴィンセントの人間に対する優しさが良く表れていたと思うのは、オリヴァーの母マギーが泣いているのを見て、「なぜ泣いている?」と聞いたとき、マギーが「長くなるから」と断ろうとしたら、「要点を」と言って、話を聞くところです。
本人が断ろうとしたら、じゃあ、言えるようになったら、とかそこまでまだ親しくないから、と無理に聞こうとしないのではないかと僕だったら思うのですが、その一線を絶妙なやりとりでさらっと飛び越えていくヴィンセントは一見ぶっきらぼうでありながら、人間に対する優しさが表れていると感じました。

それは、ヴィンセントの妻サンディが亡くなったあと会いに来たオリヴァーが「お悔やみを」と言ったら、「みんなそればかりだ」と言う場面でも表れていました。
オリヴァーが「じゃあ、なんて言ったら良いの?」と聞いたら、「どんな人だったの?」とか「さみしい?」って聞くんだ、と答えます。

型にはまらず、その人の気持ちに寄り添おうとしている様子がとても表れている場面だと思いました。

また、ナオミ・ワッツが出ているのですが、ナオミ・ワッツの変身ぶりもすごかったです。
なぜこんな姿に?と最初思ったのですが、最後にはアメリカ人ではなく、移民という設定だとわかったのですが、その移民という役柄の背景を含め、完璧に演じていたように思います。