「オーケストラ」
先日、Twitterのタイムラインにこんなツイートが流れてきました。
真面目な話、楽器を習ってるのにコンサートに行ったことがない、て子が結構居て理解に苦しむのです。狭いレッスン室でポロポロ弾くだけの世界しか知らなかったら、興味持つとか好きになる以前の話で終わっちゃう。楽器を鳴らす、てこれだけドラマティックなことなのか、て知って変わること沢山ある。
— 文 京華 (@mondks) 2018年7月25日
僕(と兄)は子どもの時、母の意向でピアノを習わされていました。
僕自身に楽器を演奏したいという気持ちがなかったので、無理矢理やらされているという気持ちにしかなれず、それが影響しているのか、その後の割と多くの人たちが思春期にギターなどに手を出す、ということもせずに来ました。
そんな楽器を演奏する、ということに関しては今まで考えてきたり振り返ってきたりしましたが、このツイートを観て、そういえば、コンサートに連れて行ってもらった記憶があまりない、ということに気付きました。
伯父がホルンを演奏していたので、伯父が演奏するコンサートに何回か行ったことがありますが、逆に言えば、それ以外はあまり記憶にないな、と。
今回の映画は、日本語タイトルが「オーケストラ!」になっていますが、原題は「Le Concert」=コンサートです。
Amazonでの評価が高かったので観てみました。
作品データ(映画.comより)
監督 ラデュ・ミヘイレアニュ
原題 Le Concert
製作年 2009年
製作国 フランス
配給 ギャガ
上映時間 124分
映倫区分 G
あらすじ(シネマトゥデイより)
かつてボリショイ交響楽団の天才指揮者だったアンドレ(アレクセイ・グシュコフ)は、今はさえない劇場清掃員として働いていた。ある日、出演できなくなった楽団の代わりのオーケストラを探しているというFAXを目にした彼は、とんでもないことを思いつく。それは、いまや落ちぶれてしまったかつての仲間を集めて楽団を結成し、コンサートに出場するというものだった。
勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆
感想
物語の冒頭、主人公のアンドレがボリショイ交響楽団の劇場清掃員として登場します。
楽団の練習中に遠くの客席から指揮の真似をする姿は、単に指揮者を夢見るおじさんなのかと思っていると、30年前に共産主義政権にボリショイ交響楽団を追われた指揮者だということが分かります。
その後、支配人宛に届いたパリのシャトレ座から届いた公演依頼のFAXを見て、かつて自分と一緒に楽団を追われた仲間たちとパリで演奏することを企てる、という話です。
物語の最後で演奏されるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲も確かに良かったのですが、当時のソ連共産主義政権がなぜ指揮者のアンドレ含め楽団員たちを追い出したのか、そして、30年ぶりなのにかつての楽団員たちがアンドレの呼びかけに応じたのか、という、つまりユダヤ人迫害という出来事を絡めて描かれているところがとても良かったです。
また、30年ぶりなので、当然かつての楽団員たちが全員揃うわけでなく、その分どういうメンバーがいるかというと、移民(ロマ?)たちが加わり、ユダヤ人だけをアンドレが守ろうとしたわけではない、だからこそ彼も加わったのだろうということが分かるのも印象的でした。
30年ぶりでリハーサルもしていないのに、ぶっつけ本番であんな演奏が出来るとはとても思えませんが、それでも、政治的な問題が含まれつつ、その中で沢山の人たちの人生が大きく変わったということも分かる物語なのですが、終始暗すぎず、かといって適度に緊張感を保つ、とてもバランスの取れた映画だと思いました。