映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「ジェラシー」

今回も、町山智浩さんの『トラウマ恋愛映画入門』で紹介されていた作品になります。



ジェラシー [DVD]


作品データ映画.comより)
監督 ニコラス・ローグ
原題 Bad Timing
製作年 1979年
製作国 イギリス
配給 日本ヘラルド映画

ストーリー(映画.comより)
夜の街に救急車のサイレンが響く。若い女が自殺を計ったのだ。彼女の名はミレーナ(テレサ・ラッセル)。彼女につき添うのは精神分析医学の教授アレックス(アート・ガーファンクル)。二人が知り合ったのは、とあるパーティだった。挑発的なミレーナの態度に無表情に応えるアレックスに、その時からミレーナは積極的だった。それ以後二人の仲は急速に進展し、部屋であるいは、クリムトなどの絵が展示されたベルベーレ宮で、デートは続いた。しかし、結婚をせまるアレックスの態度に、ミレーナは同調せず、他の男と出歩いたりする始末だった。そんなころ、アレックスはミレーナについて意外な事実を知った。彼女にはチェコに住むステファン(デンホルム・エリオット)という初老の夫がいたのだ。そして数カ月前にそのステファンとは別居している。アレックスは、そのことを、時おり仕事を手伝っているウィーンのアメリカ情報部で知ったのだが、さらに詳しいことを調査するためチェコ大使館に行った。そこで何の収穫も得られなかった彼は、ミレーナに離婚を迫る。やがて、何度かの入れ違いが生じ、二人の間に不安定な状祝が続いた。そして彼女は遂に自殺という手段をとる。その夜、彼女は泥酔状態でアレックスに電話をかけ、彼を呼び出していた。彼はミレーナの電話での様子から彼女の死を予感していたが、酒場などで時間をつぶし彼女の家についたのは二時間以上も時間が経ってからだった。無意識状態のミレーナを犯すと彼女の下着を切り裂いた。それから救急車を呼ぶアレックス。病院で彼は警部(ハーヴェイ・カイテル)の尋問を受ける。警部はアレックスに不審をもち問いつめる。アレックスが混乱している頃、ミレーナが命を取りとめたという知らせが入った。それから一年ほどたったある日、ニューヨークの街で二人は偶然すれ連うのだった。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
僕の父親はテレビで音楽番組が流れると、あからさまに嫌悪感を示すような歌謡曲に全く興味を示さず、偏見を持っている人間なのですが、母親はその年代には定番のビートルズはじめ、サイモンとガーファンクルなどいろんな外国の音楽を僕が小さい頃に教えてくれました。

僕にとっては、初めて聞いた外国の音楽グループの一つであるサイモンとガーファンクルなのですが、そのガーファンクルが俳優をしていたことは知りませんでした。
この作品では、アート・ガーファンクルが主演しています。 

物語としては、「愛」を求める若い女性と、愛しているはずの年上男性とのお互いの「愛」がすれ違う様子を描いています。

この作品を観終わり、一番ふさわしい言葉は何かと考えたとき、町山さんが著書の最初に書いていた言葉が思い浮かびました。

(『ジェラシー』は)心理学者が愛した女性への嫉妬で彼女を責め、滅ぼす物語で、そこには自分がいた。どうしようもなく嫉妬深く、自分勝手で、滑稽で恥ずかしい男が。


この「どうしようもなく嫉妬深く、自分勝手で、滑稽で恥ずかしい男」である「自分がいた」という言葉はまさに自分自身の感想を表していると思いました。

それでも思うのは、観客として見れば「どうしようもなく嫉妬深く、自分勝手で、滑稽で恥ずかしい男」だとしても、それが「愛する」ということだと思っているという本人にとっての事実です。
愛するが故に嫉妬深くなってしまい、自分勝手になってしまい、恥ずかしい行動もする。
観客としてみればそう見えたとしても、本人にとっては真剣で、真剣であるからこそ観客にとっては際だって見えます。

アート・ガーファンクルが演じるアレックスが自分だとしたら、自分にもやはり、ミレーナの「愛して!」という願いに対して自分が何を出来るのか、彼女が何を望んでいるのかがよく分かりませんでした。
アレックスとしてはミレーナが要求するように愛しているにも関わらずミレーナはそれを愛とは受け取らない。
そして、ミレーナは「愛して!」と叫びつつ、どんどん破滅的な行動に出る。

こんなにも自分(アレックス)はミレーナを愛しているのに、なぜそれが伝わらないんだ、という苦悩。
最後のアレックスの行動はクズでしかないと思いますが、「愛」を巡ってこれでもかとすれ違う過程の最後にはふさわしい決定的なすれ違いでもあったように思います。

ちなみに、この作品、レーティングがされていないようですが、セックスシーンもありますし、アレックスの陰嚢も見えたように思うので、R15くらいの感覚で、子どもがいる場合には配慮したり、大人でも観る際には気をつけていた方が良いと思います。