映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「ラスト、コーション」

ちょっと前に読んだ町山智浩さんの『トラウマ恋愛映画入門』で紹介されていた作品です。
TSUTAYAディスカスで夏の間、何回か旧作を安くレンタル出来るようになっていたので、観ることが出来ました。


ラスト、コーション [DVD]

 
作品データ映画.comより)
監督アン・リー
原題 色,戒
製作年 2007年
製作国 アメリカ・台湾・中国・香港合作
配給 ワイズポリシー
上映時間 158分

あらすじallcinemaより)
1942年、日本軍占領下の上海。ごく普通の女子大生チアチーは、抗日運動に心血を注ぐクァンに秘かな恋心を抱き、彼と行動を共にする中で次第に感化されていく。やがてチアチーは、日本の傀儡政府に協力する特務機関のリーダー、イーに近づき暗殺を遂行する危険な任務を与えられる。さっそく身分を偽りイー夫人に接近し、冷徹で異常なほど用心深いイーを誘惑する機会を窺うチアチーだったが…。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
この作品、原作は張愛玲の『色・戒』です。
英語タイトルは「Lust Caution」、欲望注意、といったところでしょうか。
映画.comではレーティングが書かれていませんでしたが、暴力的に犯すシーンや激しいセックスシーンがあり、モザイクはあまりなかったのですが、局部が見えていた場面があるので、子どもが観る場合は注意した方が良いと思います。
僕の感覚ではR18くらいが妥当だと思います。

物語の内容は日本占領下の上海を舞台として、日本側につくイーと、その彼の命を狙うチアチーというスパイ同士の恋愛です。

チアチーが大学生だったのになぜスパイとして活動していくのかというと、単に大学の友人たちが抗日運動にのめり込んでいくのにつられて、という訳ではなく、彼らのグループのリーダーであるクァンへの気持ち、彼に少しでも近づきたいという気持ちから始まっていきます。

その活動を通して、チアチーは夫人を演じるために、処女だと分かってしまってはいけないということで、好きでもない男に抱かれ、イーに近づいた時も最初、チアチーは一方的に犯されます。

イーの仕事柄常に命を狙われているので、イーは中々自分の気持ちを開示しようとしないのですが、チアチーと関係を続ける内に、肉体の結びつきが心を結びつけたのか、肉体が結びつくような深い関係が継続したからか、少しずつチアチーのことを愛し始めます。
そのイーのチアチーへの愛はとても分かりづらいもので、単なる恋愛関係だったら、そんな分かりづらい人と関係を続ける必要はありませんが、チアチーはイーの命を狙う必要性から関係を続けます。
関係を続けていくと、イーのぶっきらぼうで時には暴力でしか支配できない、支配するこということが愛だと考えている男のことをチアチーも理解していきます。

そして、最後には、2人ともがお互いを愛するようになる。
けれど、その2人の愛が深く結びついたからこそ、最後には悲惨な結末を迎える。
映画のラストでは、イーがある決断を下す場面が描かれていますが、この後の歴史を知っている僕たちは、日本側についていたイーがその後どんな目に遭ったのかは想像出来ます。

映画だけを観ると、暴力で支配し、それが愛だと考えている男が最後にもやはり暴力で支配する、ということで終わるかのように見えますが、結局彼自身もこのあと悲劇的な結末を迎えたであろうことを考えると、暴力で支配するということでは何もうまくいくことはない、ということを示しているのではないかと思います。