映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

ジェフリー・アーチャー『15のわけあり小説』

通勤時間が結構かかるようになったので読書する時間が増えました。
けれど、電車に乗っている時間に読書していると、どうしても途切れ途切れになってしまって、物語を読んでいると映画で言えば10分くらいを何度も観るような感覚になります。
そこで、1つの手として、短編を読んでみることにしました。
 


15のわけあり小説 (新潮文庫)

 

著者:ジェフリー・アーチャー(Jeffrey Archer)
訳者:戸田裕之

内容新潮社作品紹介ページより)
宝石商から18カラットのダイヤの指輪をまんまとせしめる「きみに首ったけ」。大胆な保険金詐欺を企む「ハイ・ヒール」。信号待ちをしている間に恋に落ちる「カーストを捨てて」など15の短編を収録。思わず「やられた!」と叫びたくなる、驚きのエンディング。くすっと笑い、鮮やかに騙され、ホロリと涙する――。そう、面白いのには“わけ”がある。巨匠がこだわりぬいた極上の短編集。

勝手に五段階評価
★★★★☆

感想
長編小説だと何度も話が切れてしまう、ということで、短編小説を読んでみようと思ったのですが、そのもくろみは正解でした。
この作品はタイトルにあるように、15の短編が収められていて、1つの話が電車に乗っている身にはとても良い長さでした。
途切れてしまっても、すぐに思い出せるくらいの内容ですし、この本を読んでいたけれど、他の本や漫画を読んでみようという気分になっても1つの話が終わっていれば、切り替えられるという点も良かったです。

さて、内容ですが、15の短編が収められていますが、その中の半分くらいは著者が実際に人から聞いた話を基にしている、とのことです。
タイトルに印がついているので、どれが人から聞いた話で、どれが著者が作った話なのか分かるようになっていますが、両者には遜色がないような気がしました。
これがフィクションでも人から聞いた話だとしても、小説として楽しめるなら別にどっちでも良い、ということでもあるのですが。

この手の人から聞いた話を物語にするのは、アメリカの作家だとボブ・グリーン、日本だと上原隆が僕は好きなのですが、共通しているのは、人から聞いた話を誇張することなく、静かに聞き取っている様子が思い浮かべられる所です。
物語にする上でいろんな装飾をしたりしているのかも知れませんが、書かれている文章を読む限り、とても自制されていて、例えばたまたまバーで出会った相手が話を切り出している様子などが思い浮かべられるような雰囲気があります。

この短編集で僕が特に良かったのは、前半に収められていたものでした。
カーストを捨てて」などは、映画などにも出来そうな話ではありますが、逆に良く出来た話しすぎて、短編であるが故に、詳細が分からず、なぜ今も2人が深く愛し合っているのか、というところまでは描き切れていないように感じました。