映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「ドリーマーズ」

街を歩いていると、カップルや3人以上の男に対し1人の女性、あるいはもっと多い男女混交のグループは見かけますが、男2人に女1人という組み合わせはあんまり見ないような気がします。
身近な所では、毎年会う高校からの友人2人は、今は1人の妻となっている当時の彼女と合わせて3人で旅行とかも行っていましたが、男2人に女1人という組み合わせは他に聞いたことがありません。
幼なじみだったり、よほど気が合っていたり、信頼していないと、恋愛に発展してしまい、関係が崩壊してしまうからでしょうか。

今回観た作品は、そんな男2人に女1人という3人組の物語です。
 


ドリーマーズ(字幕版)


作品データ映画.comより)
監督 ベルナルド・ベルトルッチ
原題 The Dreamers
製作年 2003年
製作国 イギリス・フランス・イタリア合作
配給 日本ヘラルド映画
上映時間 117分
映倫区分 R15+

あらすじallcinemaより)
 1968年、パリ。創設者のアンリ・ラングロワの解雇に抗議するため多くの学生がシネマテーク・フランセーズに集う。アメリカ人留学生マシューはそこで双子の姉弟イザベルとテオと出会う。3人は映画の話で盛り上がり意気投合、姉弟はマシューを自宅のアパルトマンに招き入れる。バカンスで両親が長期不在の中、3人は映画ゲームに興じる。やがてそれは奔放な性的戯れへと発展していく。こうして、学生運動が激しさを増す外の世界とは対照的に、3人はアパルトマンの一室で奇妙で危うい共同生活を満喫していくのだったが…。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
ちょっと前に「ラストタンゴ・イン・パリ」を観たからだと思いますが、「ラストタンゴ・イン・パリ」と同じく ベルナルド・ベルトルッチ監督作品と言うことで、Amazonでおすすめ作品として表示されました。
レイティングがR15+となっていますが、セックスシーンもありますし、モザイクがかかっていない場面も割とあって性器が見える場面もあったので、R18くらいの気持ちで観た方が良いかもしれません。
(個人的にはモザイクは不必要だとは考えていますが)

さて、物語の舞台は、1968年のフランス、パリ。
パリにある映画遺産の保存、修復、配給を目的とした私立施設のシネマテーク・フランセーズの創設者であるアンリ・ラングロワやスタッフたちが、財政援助をしている政府から突然更迭されるという出来事が起きます(「ラングロワ事件」)。
更迭撤回を求めて、黒澤明含め様々な映画人などが署名活動を行うなどの抗議活動の結果、更迭は撤回されるのですが、フランスでは同じ年の5月に学生を中心とした大規模なデモが起き、「五月危機五月革命)」へと発展していきます。
物語はこの「ラングロワ事件」から「五月危機」までの間に出会い、共に過ごし、最後には分かれていく男女3人の若者を描いたものです。

1968年というのは僕は生まれていないどころか、むしろ母がこの3人と同じくらいの年齢なのですが、この映画で出てくる、デモのアジテーションの様子や、3人が語る音楽や映画など、当時の時代のものがふんだんに盛り込まれています。
五月危機などは文献などでは知っていても、どういう時代だったのか、ピンと来ませんでしたが、彼らが語るフレッド・アステアチャップリンバスター・キートンなどの映画や、劇中に流れるジミ・ヘンやドアーズの曲で、その時代の香りみたいなものを感じることが出来ました。

「ドリーマーズ」(原題もThe Dreamers)というタイトルから分かるように、登場する3人は「夢見る人たち」です。
ラングロワ事件をきっかけに出会うにも関わらず、両親がバカンスに出かけている間、3人はほとんど家の中で過ごす。
映画について知識を披露し、ゲームに興じ、ゲームの罰として性的な行為を要求する。
少しずつエスカレートしていき、セックスにも興じるようになる。

イザベルとテオはきょうだいなので、セックスはしませんが、深く愛し合っているとお互いが言っていて、その中で出会い関わるようになるマシューはなんとか自分がイザベルに愛されようと試みる。
その1つとして、イザベルとデートに行くのですが、そのとき、パリの街中で大規模なデモが起きたことによる残骸を目の当たりにします。

そのとき初めて彼らは家の外で起きている出来事を知る。
それまでは家の中で、夢の中にいたけれど、ようやく外との接点が出来ます。
同じ時期に両親が一時帰宅し、小切手だけ置いて帰るシーンがあります。
子どもたちはリビングに作った、小さな子どもが作る秘密基地のような場所で裸で絡み合って寝ていて、それに驚きはするのですが、何も言わずに出て行きます。
直接声をかけた訳ではないけれど、両親がそっと外の世界をつなぐ役割をしているのだと思います。

その後、五月危機のデモに参加するところでラストを迎えるわけですが、そこで描かれているのは、男2人と女1人という関係の終わりです。
恋愛、あるいは性的な関係が入り込んでしまった時から終わりが見えていたようにも感じますし、または夢の中ではなく、現実と直面したときには3人で夢を語ることで保たれていたバランスがあっけなく崩れてしまうということを表しているのかも知れません。

60年代の雰囲気を感じることが出来るという点でも優れているとともに、若い男女の危うさを含んだ青春、あるいは男女の関係のもろさみたいなものを描いている点でもとても印象に残る作品でした。