映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「変態だ」

 以前、大学時代の友人の呼びかけで、家のリフォームというか、リノベーションをほんの少しだけ手伝わせてもらったことがあります。
 土台と枠組みはそのままでしたが、リノベーションというか、リビルドといった方が良いのでは、と思うくらい作り直していたのですが、手伝いは素人でも良いということや、(設計などはもちろんプロでしたが)むしろ素人を寄せ集めて作ろうという気概や、施主の度量にとても良いなぁ、と思いました。

 そのとき手伝わせてもらったのは、立ち上げたばかりの出版社の事務所にする予定の建物で、その出版社から初めて出る本が前野健太さんの本でした。

前野健太『百年後』 | STAND! BOOKS | 本と生活

 その前野健太さんが主演の映画ということで観てみました。

 


変態だ

youtu.be

 

映画「変態だ」公式サイト|12月10日(土)全国ロードショー


作品データ映画.comより)
監督 安齋肇
製作年 2015年
製作国 日本
配給 松竹ブロードキャスティング、アーク・フィルムズ
上映時間 76分
映倫区分 R18+

あらすじ(公式サイトより)
一浪の末、都内の二流大学に進学した男(前野健太)。
特別な才能があるわけでもない普通の男は、偶然入ることになったロック研究会でのバンド活動を契機に、ミュージシャンとしての道を歩みだす。
やがて結婚し、妻(白石茉莉奈)と生まれたばかりの息子との、ごくごく普通の家族生活を送っているが、実は学生時代から続く妻以外の女・薫子(月船さらら)との愛人関係を断てずにいた。
そんなある日、地方の雪山でのライブ公演の仕事が入り、愛人を連れて会場へ向かう男。
そしてステージに立ったその時、彼の目に飛び込んだのは、妻の姿⁉
極寒の雪山を舞台に物語は衝撃のラストに向けて走り出す。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 原作・脚本がみうらじゅん、監督が安齋肇ということで、観る人を選ぶ作品だと思います。
 テレビ番組が好きな人には、タモリ倶楽部に出ている人たちが作った映画だと考えてもらえれば、なんとなく分かってもらえるんじゃないかと思います。
 タモリ倶楽部を1度でも観たことがある人には、タモリ倶楽部を楽しんで観ることが出来るかどうかということと同じように、この作品もかなり好みがはっきりと分かれる映画だと思います。

 映画の内容としては、特にやりたいこともなく入った大学で出会った音楽がある時評価され、そのままミュージシャンとして活動していたけれど、大して売れているわけでもないのだけれど、違う道を選ぶには年齢や環境が許さないような情況にある1人の男の物語です。

 SMだったり、緊縛だったり、クマに襲われたりと荒唐無稽に映る場面がありますが、一笑に付すことが出来ない部分がありました。

 それはなぜかというと、例えばSMや緊縛など性的に過激な行為をするのは、生が満たされないからこそだということが分かるからで、その生に関してもすごく不満なわけでもない。
 結婚し、ある程度満足できるセックスを出来るくらいの妻がいて、子どももいる。

 けれど、すごく幸せかと言えば、バンドのメンバーは大学卒業後に就職し、音楽を続けているのは自分だけで、コアなファンは覚えていてくれているけれど、一曲売れただけのミュージシャンだという現実。
 結婚する前から続いていた女を切り捨てることも出来ずに延々と関係を続けている。

 今では愛人となった彼女も結構な年齢だからこそ切り捨てることも出来ず、結局お互い泥沼に陥っている。
 こんなバカな話が、と笑って済ますことも出来るのかも知れませんが、生が満たされないからこそ性が過激になるということや、愛人との関係など、決して笑って済ますことが出来ない内容が描かれているように思いました。