映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「ローマでアモーレ」

 毎年一作品を公開し続けてきたウディ・アレンが今年の作品はお蔵入りかも知れない、というニュースを聞いて、少し複雑な気持ちになっています。

映画監督ウディ・アレン、休業状態に追い込まれる | ciatr[シアター]


 もちろん性暴力やセクハラはあってはならないけれど、既に撮影も終わっていて、後は公開を待つだけ、という作品は公開して欲しいな、と個人的には思っています。
 (公開しても、ウディ・アレンに収入が入ったり、作品を評価されること自体がダメなのだ、ということなのでしょうが)

 と、ウディ・アレンの映画がもしかしたら、過去の作品含めて観られなくなってしまうのでは、という危機感もあり、観ていなかった作品を観てみました。

 


ローマでアモーレ(字幕版)

 

作品データ映画.comより)
監督 ウッディ・アレン
原題 To Rome with Love
製作年 2012年
製作国 アメリカ・イタリア・スペイン合作
配給 ロングライド
上映時間 101分
映倫区分 G

あらすじシネマトゥデイより)
娘がイタリア人と婚約した音楽プロデューサーのジェリー(ウディ・アレン)は、ローマを訪れる。婚約者の家に招待されたジェリーは、浴室で歌う婚約者の父がオペラ歌手のような美声であることに驚く。一方、恋人と同居中の建築学生ジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)の家に、恋人の親友モニカ(エレン・ペイジ)が身を寄せてくる。かわいらしい外見とは裏腹に恋愛に対しては積極的な彼女を、ジャックは少しずつ気になり始めていて……。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★☆☆

感想
 物語の内容の前に、出演する俳優たちがとても豊かでした。
 近年の作品ではあまり登場することがなくなってきた、監督のウディ・アレンも出演していますし、「ライフ・イズ・ビューティフル」のロベルト・ベニーニ、多分洋画をいくつか観たことがある人は「この人観たことある」と分かるであろう、助演も主演もこなすアレック・ボールドウィン、説明の必要がないと思われるペネロペ・クルス
 僕が最近観た作品で説明すると、「カフェ・ソサエティ」(この作品もウディ・アレン監督)のジェシー・アイゼンバーグ、「マギーズ・プラン」のグレタ・ガーウィグ、そして、日本でもすごく人気が出た「JUNO/ジュノ」のエレン・ペイジ

 この作品では、ものすごい美男や美女はペネロペ・クルスくらいなのですが、それは彼女が娼婦役なので違和感なく、美貌と色気を放っています。
 その他の人たちは、たまたまだったり、元々ローマにいる市井の人たちの様子を切り取っているので、ものすごい美男や美女ではないというところが、この作品にはとても合っていると思いました。

 作品の内容としては、様々な市井の人たちの「愛」についてのやりとりが並行して描かれます。
 同棲している彼女の友だちがやってきて、付き合ってもうまくいかないと分かっているにもかかわらず奔放な彼女に惹かれていく青年。
 新婚の挨拶でローマにやってきて、すれ違う夫婦。

 まだ、これだけだったら良かったのですが、「愛」についてのはずなのが、娘の婚約者の父親にオペラを歌わせるという内容など、それ自体はとても面白くて笑えるウディ・アレン流のユーモアが溢れているのですが、逆に言えば、違う作品で描かれても良かったのではないか、思いました。

 見所の1つにはローマの名所、例えばコロッセオやスペイン広場などが映るので、ローマに愛着があることは分かるのですが、物語としては、結局「ローマというロマンチックな街に影響されつつも、落ち着くところに落ち着く」、というもので、物足りなさを感じました。
 ローマの街が魅力的であればあるほど、ハメを外してしまう人たちも出てくるわけで、もちろん、そういう人たちも少し描かれるのですが、そのハメを外した結果、「愛」を再認識して終わる、という内容でした。