映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側(1)』

 なるべく節約しようという生活を送っているので、新しい漫画作品に手を出すことは控えているのですが、以前書評を読んで気になっていた作品が違うところでも「良かった」と勧めていたので、買って読んでみました。

 最初に読んだ書評は新聞に載っていたもので、 後押しされたのは、漫画家の古泉智浩さんと歌人枡野浩一さんがやっているPodcastです。

17歳と75歳、好きな本に夢中になって|好書好日朝日新聞社書評サイト)

第66回『男が痴漢になる理由』『メタモルフォーゼの縁側』: 本と雑談ラジオ

 

 


メタモルフォーゼの縁側(1) (カドカワデジタルコミックス) Kindle版


内容KADOKAWA作品紹介ページより)
75歳のおばあちゃんが出会ったもの、それはBL
ふと立ち寄った書店で老婦人が手にしたのは1冊のBLコミックス。75歳にしてBLを知った老婦人と書店員の女子高生が織りなすのは穏やかで優しい、しかし心がさざめく日々でした。

感想
 ちょっと調べてみたらWebで連載されているようで、結構沢山Webで読めるようになっていました。

メタモルフォーゼの縁側 - Webで漫画が無料で読める!コミックNewtype

 僕がこの作品に興味が沸いたのと、読むの少し足踏みしていた理由はBLに惹かれるという設定です。
 単に食わず嫌いなのかも知れませんが、僕自身はBLには興味を抱いたことがないので、BL的内容がどのくらいこの作品に入り込んでくるのかが分からなかったので、ちょっと躊躇していました。

 けれど、同じようにBLに興味がないと言っている古泉さんも良かったと言っていたのと、桝野さんはそんなことはないんじゃないかな、とおっしゃっていましたが、主人公の高校生うららのことをあまりにもブスブス連呼するので、逆にそれに興味が沸きました。

 まだ一巻しか読んでいないので、今後どのような展開になるのかは分かりませんが、BLの描写はほとんどなく、BLの漫画を読んではまった75歳の独り身の女性市野井雪と、最初にその漫画を買うときに接客をした17歳の女子高校生うららとの交流を描いています。
 うららはブスというかもさっとしていて、容姿に気を遣うようなことはなく、かなり過激な描写のあるBL漫画も沢山持っているような女の子です。
 市野井さんがBL、特にその中でも1つの作品にはまったことにより、うららを介して市野井さんが同じ作者の他の作品だったり、おすすめの作品を紹介してもらうことで二人が交流していきます。

 うららもBLが好きとは言え、コミケのようなところには言ったことがなく、市野井さんとの交流が始まったことで、一緒にコミケにも出かけるというところで一巻は終わります。

 これからの展開も楽しみなのですが、好きなものを通して誰かと出会う、ということの良さ、今まで出会うことはなかったり、敬遠していたようなものでもふとしたきっかけで出会い、はまっていくということは、シンプルにうらやましいなと思いました。
 
 僕にとっては山登りがそれに当たりますが、ふとしたきっかけで、今まで全く興味がなかったり、素通りしてしまっていたものに出会う、ということ自体がとても素敵なことだと思います。
 そして、そのはまったもの、好きになったものを通して誰かと出会い、さらに新しい出会いがあったり、世界が少しずつ広がっていく。

 僕はまだ山登りを通して誰かに出会ったり、世界が広がっていくという経験はないので、うらやましいなぁ、と思うものの、主人公うららは市野井さんに出会うまでは誰とも共有することなく過ごしていたことを考えると、いつか僕にも山登りなど好きなものを通してそういう出会いがあるのかも知れない、そのときまでゆっくり待てると良いな、という気持ちにさせてもらいました。

 2巻以降で描かれるだろう同人誌の即売会とかは、そういうイベントがあること自体は知っていますが、僕にとっては知らないことばかりなので、知らなかったことを知られると思うと楽しみです。