映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「しあわせはどこにある」

 一緒にいても不幸になるということだけは分かるので、元配偶者とやり直したいという気持ちは全くないのですが、自分にとって幸せとはなんなのか、ということを時々考えます。
 安定した職に就いてもおらず、同級生たちの稼ぎの3分の1も稼いでいませんが、誰かを養わなければならないということもなく、こうして映画を沢山観たり、本を読む時間があるので、これはこれで良いかも、という気持ちです。

 家族と一緒に住んでいた場所は都心で、博物館や美術館だったり、映画館にも近く、山に行くにしてもハブの駅へのアクセスが良く、設備面でも床暖房があったり、浴室乾燥が出来たり、キッチンも三口で使いやすいものでした。
 家から追い出されたすぐの時こそ、家賃の安さだけで選んだ物件だったので、「都落ち」のような感覚になりましたが、家族もおらず、料理を作るには必要だったコンロも一人だと使うことはなく、洗濯も毎日複数回していたのが、数日に1回になったので、浴室乾燥もいらない生活になりました。
 あとは美術館や映画館、そして山に行くときのアクセスだけはやっぱり都心だと便利だと思うものの、今と同じレベルの家を都心で探すと3倍くらいになるので、そのためにあくせく働くことを考えると、それは勘弁、という感じです。
 
 家事・育児をすることもなくなり、誰かを養ったり家を維持するためにお金を沢山稼ぐ必要もなく、その分の時間で映画を観たり、本を読む時間があって、これはこれでなかなか良いのではないかとも思っています。
 けれど、この生活が幸せか、と聞かれると、よく分かりません。

 30半ばの中年が何言ってんだか、という感じかも知れませんが、今回の作品は、中年の男性が「しあわせ」を考えて旅に出る映画です。
 


しあわせはどこにある(字幕版)

 
作品データ映画.comより)
監督 ピーター・チェルソム
原題 Hector and the Search for Happiness
製作年 2014年
製作国 イギリス・ドイツ・カナダ・南アフリカ合作
配給 トランスフォーマー
上映時間 119分
映倫区分 G

あらすじシネマトゥデイより)
美貌の恋人クララ(ロザムンド・パイク)と一緒にロンドンで満ち足りた日々を過ごす精神科医のヘクター(サイモン・ペッグ)は、自分を不幸だと思い込む患者たちの話を聞き続けるうちに、自身が幸せを感じられなくなってしまう。充実しているはずなのに自分の人生がつまらなく思えてきた彼は、幸せのヒントを求めて中国、チベット、アフリカなどを巡る旅に出るが……。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 
精神科医をしているヘクターは、毎日同じペースの整った生活をしていました。
 恋人のクララが同じ時間に起こしてくれ、クララが作ってくれた同じ朝食を取り、同じ曜日の同じ時間に訪れる馴染みの患者たち。
 患者たちの話も大体決まっていて、ヘクターも大体同じ返答をする。

 そんな生活に不満もなく過ごしていたけれど、あるとき、患者である占い師の女性に自分がいつも適当に過ごしていることを含め、満ち足りていないことを言い当てられてしまう。
 そして、その女性の助言もあり、クララを残して一人旅に出る。

 旅の行き先で出会う人はとても魅力的ですし、その場所もそれぞれとても良いのですが、物語としては、チルチルとミチルが幸せを探して旅をする「青い鳥」の現代版です。
 その旅の後でヘクターが見つけ出す結論も目新しいものはないかも知れません。

 けれど、僕がとても良いな、と思ったのは、ヘクターが出会った人たちの「しあわせとは?」との質問への答えや、ヘクターが感じたり、考えたりした内容が書かれるクララからこっそりプレゼントされた旅の手帳です。
 ヘクターはその手帳に絵を描いたり、出会った人たちの「しあわせとは?」という質問への答えが書かれるのですが、特に2つの言葉が印象に残りました。
 

9. “Happiness is being loved for who you are.”
しあわせとはそのままの自分を愛されること

 

 14."Listening is loving."
聴くことは愛すること

 
 14の「聴くことは愛すること」は精神科医であるヘクターだからこそ書かれた内容なのかも知れませんが、シンプルだけれどもとても印象に残る言葉でした。
 9の「しあわせとはそのままの自分を愛されること」はどこかで聞いたことのあるような言葉ですが、改めてすごく大切なことだと思います。

 ヘクターが旅の手帳に書いた「しあわせ」は14あり、その中でも、この2つの言葉が僕の心に残ったということは、僕自身がお金やモノを得ることに幸せを感じているわけではないこと、そして、この2つを望んでいるのだろう、ということを明らかにしてくれたように思います。
 誰かにそのままの自分を大切にして欲しいと思っているし、誰かの話を聴きたいな、と。

 観た人がどの言葉が印象に残ったのかを考えるだけで、自分にとって何が大切なのか、何が幸せにつながるのかを知ることが出来る、それこそがこの作品の良さなのかと思います。