映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「サニー 永遠の仲間たち」

 日本でのリメイク版の公開に合わせてか、オリジナル版がAmazonで見られるようになっていました。
 日本版はストーリーもよく分からないのと、書評や感想も見ていなかったので興味がなかったのですが、Amazonでのレビューを見ると軒並み高評価だったので、オリジナルの韓国版を観てみることにしました。
 


サニー 永遠の仲間たち (字幕版)

 
作品データ映画.comより)
監督 カン・ヒョンチョル
原題 Sunny
製作年 2011年
製作国 韓国
配給 CJ Entertainment Japan
上映時間 124分
映倫区分 PG12

あらすじシネマトゥデイより)
ナミ(ユ・ホジョン)は夫と高校生の娘に恵まれ、主婦として平凡だが幸福な毎日を送っていた。そんなある日、彼女は母の入院先の病院で高校時代の親友チュナ(チン・ヒギョン)と思わぬ再会を果たす。25年ぶりに再会した友人はガンに侵され、余命2か月と宣告されていた。チュナの最後の願いはかつての仲間たちと会うことだった。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★★

感想

 Sunnyというタイトルは、高校で出会った仲間たちのグループ名なのですが、なぜSunnyなのかというと、出会った当時、1970年代後半に流行っていたのが、Sunnyという歌です。

 

youtu.be

 

 日本でも聞いたことのある人は沢山いると思いますが、元々はボビー・ヘブBobby Hebb)の歌で、1966年に発表した本人が歌ったものもヒットしていますが、作品内では上に載せたボニーM(Boney M)が歌ったものが流れています。

 歌詞の内容についてはあとで詳しく触れるとして、Sunnyがグループ名になったり、Sunnyに合わせて踊るシーンがあったりと1980年代半ばの韓国の様子がよく伝わる内容になっています。
 ボビーMがカバーしたことでSunnyがとてもアップテンポで明るい曲になりましたが、このボビーMが歌うSunnyが代表されるように、1980年代半ばの韓国の実情をあくまでも明るいタッチで描いています。

 主人公イム・ナミが好きになるジュノと夜の街を家まで送ってもらう途中には、兵士たちが列を組んで待機していたり、他の高校にいるグループとの闘争シーンでは、民主化運動のデモ隊とそれを弾圧しようとする兵士たちとの衝突と重ね合わせて描かれています。
 上の2つのシーンはコメディタッチで描かれていますが、より時代の雰囲気を感じるのが、民主化運動に参加しているナミの兄についてです。
 家族で食事を取っているとき、ナミの兄と父親が口論になります。
 民主化運動ではなくて勉強しろという父親に向かって、兄は政府の下僕め、というようなことを言う。
 一触即発の情況はハルモニ(おばあさん)の言葉で流れるのですが、時代の雰囲気が伝わる会話でした。
 実際、その後のシーンでは兄本人は出てこず、兄が民主化運動に加わっているということで公安警察がやってくる。
 翌1987年6月には民主抗争が起き、その少し前の、まだ家族も民主化運動に加わることを本気で止めることがない、けれども、民主化運動に加わっている兄は身を隠さなければならないので、そのあとは現れません。
 現代のシーンでも会話には出てきて生きていることは分かるものの、どういう人生を歩んでいるのかは分からないようになっています。

 学生時代に築いた友情を確認するというか、再構築する物語ですが、単純に友情物語ではなく、韓国という国の偽ることの出来ない時代背景が描かれていることにも注目したい作品でした。
 
 それは、イム・ナミが母校を訪れるシーンでも分かります。
 イム・ナミたちが高校生だった時代は制服もなく私服で登校し、つけまつげなど化粧をしても教師はとがめることがなかったにも関わらず、現代での同じ高校では、みんな制服を着ていて、表情こそ明るいものの、化粧をしていたりと自由な雰囲気はありません。
 これは、日本でも最近ようやく本格的な調査がされるようになって報道されるようになった年々学校というその場所に規則が増えていることともリンクします。
 民主化運動などもあって、いつの間にか家族の行方が分からなくなったり、殺されるということがあった一方、そこには確かに自由があり、現代は民主化され、家族の行方が突然分からなくなるようなことはほとんどなくなったとはいえ、学校では規則ばかりで自由がなくなっている。

 この映画が、単に友情を描いたものではなく、1970年代と現代との問題点を、コメディタッチでそこに焦点がいかないようにしながらも、しっかりと描いているということが本当に素晴らしいと思いました。

 さて、タイトルでもあり、高校で出会った仲間のグループ名の由来でもあるSunnyですが、少し和訳してみました。
 ボビー・ヘブは女性に向けて歌ったと思いますが、この映画では男性が愛しい女性に向かって歌ったものではなく、グループ内のリーダー、ハ・チュナだったり、グループのメンバーであるチョン・スジに対して歌ったものと考えられるので、それを前提にして見ました。

 

Sunny
太陽のような人よ
Yesterday my life was filled with rain
私の人生は昨日まで雨に降られていたようだった
Sunny
太陽のような人よ
You smiled at me and really eased the pain
あなたが私に微笑んだとき、私の痛みはすっかり消えてしまった
Now the dark days are gone, and the bright days are here
もうあの暗い日々は過ぎ去って、照らされた日々が今ここにある
My sunny one shines so sincere
私の太陽のような人は輝いていて、とても誠実な人
Sunny one so true, I love you
太陽のような人は正しく、私は愛している
Sunny
太陽のような人よ
Thank you for the sunshine bouquet
太陽の光で照らしてくれてありがとう 
Sunny
太陽のような人よ
Thank you for the love you brought my way
愛をもって私の道を示してくれてありがとう
You gave to me your all and all
あなたは私にすべてのものを与えてくれた
And now I feel ten feet tall
だから今、私は10フィートも成長したように感じる
Sunny one so true, I love you
太陽のような人は真実で、私は愛している


 時代背景の描き方や、現代社会が抱える問題点のあぶり出し方をも含めとても良い作品だったので、日本でのリメイク版を見るとがっかりしてしまいそうな気もするので、見るとしても大分時間が経ったあとで見てみたいと思います。