映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「パディントン」

 子どもたちが来たら観ようかな、と思ってAmazonのウォッチリストに入れていたのですが、もう会うことはなさそうですし、そもそも、AmazonのFire TV Stickは追い出された家にあるので、TVのない僕の家はもちろん、実家でも観られないことに気付きました。
 子どもたちと一緒に、という必要がなくなったので、早速観てみました。
 


パディントン(字幕版)

  

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作品データ映画.comより)
監督 ポール・キング
原題 Paddington
製作年 2015年
製作国 イギリス
配給 キノフィルムズ
上映時間 95分
映倫区分 G

ストーリー(公式サイトより)
イギリス・ロンドン。真っ赤な帽子を被った小さな紳士が、はるばるペルーから家を探しにやってきた。大好きなマーマレードを、スーツケースいっぱいに詰め込んで。英国紳士らしく、とっても丁寧な言葉づかいで道行く人に話しかける彼だったが、なぜか誰からも相手にしてもらえない。それは・・・彼が“クマ”だから!
やっと出会った親切なブラウン夫人に、出会った駅名から“パディントン”と名付けられ、初めての都会暮らしを初めてみたけれど、野生の本能が邪魔してドタバタの連続!
生まれて初めてのお風呂にビックリして家中を水びだしにしたり歯ブラシで耳掃除をしたりたまたまスリを捕まえたり純粋で礼儀正しいパディントンは、はじめは煙たがっていた心配性のブラウンさんや子供たちとも仲良くなり、やがて街の人気者になっていく。しかし「いつまでもブラウンさん一家のお世話になっていられない」と、パディントンは家を探すことに。そんなある日、彼をつけ狙う謎の美女・ミニセントに誘拐されてしまう!
果たしてパディントンは無事に家を見つけることができるのか?そして、そこには、もっと素敵な何かが待っていた…

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★★

感想
 
元々は児童書で、僕は読んだことはないのですが、日本でも出版されています(『くまのパディントン』)。
 原作の児童書を読んだことがなかったので、どういう物語なのか全く知らずに観たのですが、とても良かったです。
 100分に満たないので、小さな子どもであっても観られると思いますし、内容的にも、すごく愛らしいという感じに装飾されているわけでも、かといってリアルなクマからも逸脱しない程度の雰囲気と姿を保っているので、子どもたちもパディントンに愛着を持てるのではないかと思います。

 物語の展開というか、ラストは予想通りパディントンが「家族」、「居場所」を見つけるというもので、その中で「家族とは」というものを考えさせる内容になっています。

 僕自身がとても良かったと思ったのは、パディントンを狙うミニセント(ニコール・キッドマンが演じているのですが、ものすごく良かったです。演技そのものもですが、醸し出す雰囲気とか表情とか)がなぜパディントンを狙うのか、ということが明らかになるシーンでやりとりされる、保護される動物とは、という議論です。

 40年前の出来事として、かつてパディントンの伯父と伯母に会った冒険家が、標本にして持ち帰らなかったことに対して、ロンドンの学者たちが(そのクマは)「クリケットをするのか?」「紅茶は飲むのか?」と質問します。
 これは、日本では未だに議論というか、持ち出される「保護される動物に知性はあるか?」というものです。
 最近も東京オリンピックに向けての最初のテスト大会と位置づけられていたセーリングのワールドカップでイルカショーを行ったことで、ショックを受けた海外の選手や関係者が多数いたなどから国際セーリング連盟からも批判されたことが報道されていましたが(参照:江の島セーリングW杯でイルカショー、国際連盟が「失望」表明 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)、その際にも日本では「海外では知性がある動物だけ保護するという考えなんでしょ?」という意見がちらほら見えました。

 この映画を観ていると、少なくとも40年前のイギリスでは今の日本と同じような意見があったものの、今ではもはやそんな意見を出す場もないということが分かります。
 むしろ、動物保護の活動をしていると見せかけながら、実は様々な理由を付けて剥製などにして「保存」するために、命を奪ったり、命を奪おうと過激な行動に出ている人がいるということを風刺しているのだと思いました。

 また、クマが街中にいるなんて、そもそも難しいのではないか?と思っていたのですが、それも映画の中のように、帽子を被っていて、大きなスーツケースを持っていれば、多くの人にとっては、ただのモブでしかなく、案外気付かずに通り過ぎるような気もしました。
 この点も、なんだか現代社会の特に大都市の人々の暮らしを風刺しているようで面白かったです。

 児童書が元になっているということからも、どんな年齢でも楽しめる作品になっていると思いました。