映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「ノクターナル・アニマルズ」

 観たいと思っていてチェックしていた作品が、Amazonでプライム対象になっていたので早速観てみました。
 


ノクターナル・アニマルズ (字幕版)

 
作品データ映画.comより)
監督 トム・フォード
原題 Nocturnal Animals
製作年 2016年
製作国 アメリ
配給 ビターズ・エンド、パルコ
上映時間 116分
映倫区分 PG12

あらすじシネマトゥデイより)
アートギャラリーの経営者スーザン(エイミー・アダムス)は、夫ハットン(アーミー・ハマー)と裕福な生活をしていたが、心は空っぽだった。ある日彼女のもとに、20年前に離婚した元夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼が書いた「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」という小説が届く。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 
冒頭で全裸の、しかもかなり太った女の人たちが踊っているシーンが流れ、「これはなんだ!?」「何が始まるんだ!?」と思っていたら、主人公のスーザンがギャラリーの経営者だということが分かりました。
 華やかなギャラリー、そこに集まる大勢の人たち、家に帰ると使用人が何人もいるような豪邸で、一見すると社会的な成功や経済的な豊かさをも享受しているように見えます。
 けれど、一緒に経営を担う夫ハットンは、展覧会の初日だというのに現れず、「来てほしかった」と言っても「仕方がなかった」と答え、2人に溝があること、さらに、会話の中では経営がそこまでうまくいっていないことが分かります。

 そんなとき、校正用の一冊の本がスーザンの元に届きます。
 20年前に結婚していたエドワードが書いた小説で、小説の冒頭には「スーザンへ捧げる」との署名付き。
 2人でゆったりすごそうと使用人に暇を取らせていたスーザンは、夫が突然の出張(というなの不倫旅行)でいなくなった広い家に1人残され、そこで「スーザンへ捧げる」と書かれた「ノクターナル・アニマルズ」(夜の獣たち)というタイトルの小説を読むようになります。

 物語は、スーザンの現在とエドワードとの出会いから別れまでの過去と共に、スーザンが読んでいる小説の世界が交互に入れ替わります。
 小説がとてもよく出来ていて、20年前のエドワードとの出会いから別れを思い出すスーザンは、仕事に身が入り込まないほど、その小説の世界とそれを作り出したエドワードのことで頭がいっぱいになります。

 いつになったら現在のエドワードが登場するのだろう?と思っていたのですが、現実世界と小説の中の世界という、全く別の物語だと思っていたことが、実はが最後になってリンクしていたということが最後に分かります。

 小説に描かれる主人公トニーは旅の途中で、妻と娘をレイプされて殺されてしまいます。
 最後に復讐を果たしつつも、トニー自身も死んでしまいます。

 これが見事に、エドワードからすれば20年前に起きた出来事とリンクしています。
 エドワードはかつて、スーザンから「自分以外のことを書いたら?」と言われケンカになったことがあります。
 エドワードはそのとき「小説家はみんな自分のことを書いている」と反論するのですが、「ノクターナル・アニマルズ」という小説は、スーザンにとっては、エドワード自身のことが書かれたものではないと考えたのでしょうが、それは比喩的な表現を用いたエドワード自身のことなのだと分かるようになっています。

 妻と娘がレイプされること、そして2人が殺され、その2人を見つけ、絶望する。
 犯人を見つけ出し、復讐したけれど、最終的には自分の命を失ったこと。
 最後のシーンでそれらの小説に描かれていた出来事がどのような意味を持っていたのか、すべてがつながっていたことが分かるようになっていました。

 伏線回収が好きな人にはとても面白い物語なのではないかな、と思います。