映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

借金玉『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』

  以前から気になっていた本なのですが、(主に値段が理由で)手を出さずにいたのですが、最近またよく聞いているPodcast本と雑談ラジオ)でも取り上げられていたので(第70回『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』『睡蓮』: 本と雑談ラジオ)読んでみました。
 ちなみに先日書きましたが、自分ではない誰かに向かってたとえ医師であっても、本人が求めていたり、困っていないにも関わらず「発達障害」と考え、その「誰か」を理解しようとするためにこの本を読もうとするのはやめたほうが良いと思います。
 僕自身は、自分自身のことを理解するために読みました。

 さて、この本の著者である借金玉さんは、この本を読んで知ったのですが、僕とほぼ同じ世代で、Twitterやブログをやっています。
 ブログでは、最近の情況も書かれていて、この本が売れたことによって、心身の体調を崩されている様子も分かります。

 

syakkin-dama.hatenablog.com

 


発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術 Kindle版

 
 さて、内容についてですが、結論から言うと、『それでいい。』の時と同様、泣きそうになりました(『それでいい。』の時は周りに人がいなかったので涙が実際に流れましたが、今回は電車内だったのでなんとか我慢しました)。
 何が一番心に響いたのかというと、この文章です。

「死にたい。自分には生きる価値がない」と言う友人に対して、僕は極めて自然に「価値がなくたって死ぬ必要はない」と主張しました。

 
 この文章だけ読んでもいまいち分かりづらいかも知れませんが、「発達障害」の二重障害として併発している「双極性障害躁うつ病)」の体験から、うつ病に関してのライフハックが書かれている流れで、うつの状態とはどのような状態なのか、ということが書かれていました。
 うつ病というのは、「明確に死に至る病」だということが借金玉さんの体験を元に書かれていて、借金玉さん本人が「死にたい」、「自分には生きる価値がない」と考えている中で、友人の言葉に反応した言葉が上に引用したものだったそうです。
 借金玉さん自身も驚いた様子が書かれていたのですが、うつ病によってとても苦しい経験をしている人が言っていることだからこそ、僕自身にもとても響いてきたのだと思います。

 「価値がなくたって死ぬ必要はない」。
 本当にその通りだと思います。
 僕自身のうつ病の症状を付け加えれば、「価値や希望がなくたって死ぬ必要はない」という言葉になると思います。

 この本のタイトルを最初に見たとき、「『食える人』に変わった すごい仕事術」という部分が引っかかりました。
 ほとんど読んだことはないのですが、なんとなく敬遠している自己啓発本なのかな、と思ったからです。
 けれど、この本に書かれているのは、あくまでもライフハック=生きるための方法でした。

 最初のほうこそ、具体的な商品まで示しながら、自分がどのように仕事をしているか、ということが書かれているものの、一貫しているのは、借金玉さんが抱える「生きづらさ」にどのように対処してきたのか、という具体的な方法です。
 「発達障害」というと、「発達障害者」という人がいて、全くその要素のない「健常者」と明確に分かれていると考える人もいるかも知れません。

 けれど、最後に書かれている精神科医の解説で指摘されているように、「発達障害」の要素は多くの人が持っていて、グラデーションになっています。
 ふさわしい例か分かりませんが、そのグラデーションは性に似ていると思います。
 明確な「男性」「女性」というのではなく、そこには様々なグラデーションがある。
 70%くらい男性で、30%くらい女性だというグラデーションの「男性」がいるように、日常的にはそこまで困ることはないけれど、ストレスや疲れていると「発達障害」の要素が明確になる人もいれば、入院が必要なほど「発達障害」によって日常生活が困難な人もいる。

 だからこそ、この本に書かれているライフハックは、どんな人にとっても役に立つのではないかと思います。
 それは例えば、ユニバーサルデザインのように、一番困難を感じる人に合わせて作られたものは、どんな人にとっても困難を感じることがないのと似ています。
 普段は困難を感じずに歩けていて、必要がないエレベーターやスロープが、(2ヶ月経ってもまだ治っていない僕のように)一時的に怪我をし階段の上り下りに痛みを感じるようになった人にとってとても助かるということと同じようなことです。

 さて、この本の中で一番重要だと思ったこと、そして、自分自身の実感とも重なるところを引用して終わりにしたいと思います。 

不眠は本当に危険な状態だからです。不眠は長く続けば続くほど、加速度的に全てが悪くなっていきます。(中略)不眠は死に至る病であり、ありとあらゆる精神疾患につながる道だということは強く認識してください。さっさと服薬しましょう。心療内科は怖くありません。とにかく予約です。

 
 僕も今回のうつ病発症は、不眠から始まりました。
 世間ではうまく眠れない人に向けて、サプリや安眠グッズなど沢山の商品が展開されています。
 僕もそれらをいくつも試してきました。
 けれど、一番良い方法は、適切な薬を服用することです。
 そのためには心療内科に行くこと。
 まずは、そこで処方された薬を飲んでしっかりと眠る。
 僕も失敗したからこそ、上の言葉を多くの人に伝えたいと思っています。