映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「マザー!」

 今回も、前回の「オーバーボード」のようにAmazonで表示されたので観てみた作品です。
 レビューの評価は「オーバーボード」のように高くはなかったのですが、レビューに聖書と関連させていると書かれているのを読んで気になったので観てみました。
 


マザー! (字幕版)

youtu.be


映画『マザー!』DVD公式サイト|パラマウント


作品データ映画.comより)
監督 ダーレン・アロノフスキー
原題 Mother!
製作年 2017年
製作国 アメリ
上映時間 121分

ストーリー(公式サイトより)
郊外にある一軒家。妊婦の妻と夫が穏やかな暮らしを送っていた夜、家に不審な訪問者が訪れる。翌日も次々と現れる謎の訪問者たち。妻は不安と恐怖を募らせる中、夫はそんな怪しげな連中を快く招き入れてしまう。
しかし、訪問者たちの行動は次第にエスカレートし、常軌を逸した事件が起こり…。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★☆☆

感想
 
日本では公開されていないのでレーティングが設定されていませんが、ネット上のいくつかの記事では内容のグロテスクさから公開が中止になったということも書かれているので(日本公開中止!ジェニファー・ローレンス主演作『マザー!』は、何が衝撃なのか? | dmenu映画)、観る際には注意が必要です。
 具体的には殺戮と人肉食(カニバリズム)が描かれています。
 僕の感覚ではR15くらいが妥当かなという気がします。

 さて、作品の内容ですが、いろんな要素が詰め込まれすぎていて、1回観ただけでは全部を理解出来ない作品でした。
 かといって、もう一度観たいかと言われれば、1度で十分なので、1度観ただけでの気付いたことと感想を書きたいと思います。

 最初は世間から離れて暮らす作家とその妻、という設定に、サリンジャーをモチーフにしているのかな?、でも、タイトルの「マザー!」という意味が分からないな、と思って観ていたのですが、後半になるに連れて、そのまま聖書をモチーフにしている内容に変わっていきました。

 聖書をモチーフにしているということが明らかになってくると、前半部分の内容も、聖書の内容だったことに気付きます。
 具体的には、最初の訪問者がアダム、そしてその訪問者の妻、つまりエバがやって来る。
 二人は家主(=神)がダメだ、と言っていることをして、家から出て行くこと(=楽園からの追放)を宣告される。
 そのアダムとエバの元には2人の息子たち(カインとアベル)がやって来て、兄が弟を殺してしまう(カインのアベル殺害)。
 その後、その死を弔うために沢山の人が家にやってきて、やりたい放題になった結果、キッチンの水回りが破壊され(=ノアの箱船)、家には再度夫と妻の2人になる。

 その際妻が夫に言った言葉がとても印象的でした。
 「子どもが欲しいなんて冗談でしょ?私をファックすることも出来ないくせに」
 これは、そもそも、暗示されている夫=神、妻=母なる大地という関係から、大地自体も神が作り出したものなので、自らが作り出したものとセックスすることなどあり得ないということを表しています。
 ここをどう乗り越えるのかな、と思っていたのですが、そのまま2人はセックスし、あっさり妊娠。
 神と大地がセックスした結果、生まれてきた赤ちゃんはまさにイエスで、妻が拒否する中、夫(=神)はその赤ちゃんを集まった人々に手渡してしまい、殺され、食べられてしまう(イエスの死と、礼拝でのパンとぶどう酒)。
 妻の怒りが沸点に達し、「ヨハネによる黙示録」に描かれているような最後の時が来る。

 楽園から追放されたはずのアダムとエバがなぜか追放されずに残り、セックスするシーンが何を示していたのかということも気になるのですが、やはり一番違和感があったのは、父なる神と母なる大地がセックスする、という点です。
 イエスの母はマリアなのですが、ここに登場する妻はマリアを示す人物としては描かれていませんし、夫もイエスの父であるヨセフを示す描写もありません。
 なので、神が自ら作り出した大地とセックスして子どもが生まれてくるという描写は僕にとってはかなり違和感のある描写でした。

 他にもいろんな観方が出来る作品だと思いますが、この作品で一番良かったのは、主演のジェニファー・ローレンスです。
 いろんな表情を見せるところも含め、とても美しい女優だなと思いました。