映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「AMY エイミー」

 観たいと思っていた作品が次々にAmazonプライムで観られるようになって、1人歓喜しています。
 特に今は体調がものすごく悪く、活字の本を読むことも難しいので、映画も集中力がいるものの、途切れ途切れでも、ぼーっと観ることが出来るので助かっています。

 今年は28歳という年齢でAviciiが亡くなり、ショックを受けたのですが、それよりもショックを受けたのが、2011年にこの作品のエイミー・ワインハウスが27歳でなくなった時でした。
 それは、Aviciiが自分にとっては少し下の年齢で、エイミー・ワインハウスが同年齢なことと、彼女が歌う内容が現実のひどさを昇華したものだったからです。
 


AMY エイミー(字幕版)

 

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映画『AMY エイミー』公式サイト

作品データ映画.comより)
監督アシフ・カパディア
原題 Amy
製作年 2015年
製作国 イギリス・アメリカ合作
配給 KADOKAWA
上映時間 128分
映倫区分 G

内容(公式ページより抜粋)
2011年7月23日に急逝したエイミー・ワインハウス
1983年、イギリスのユダヤ系家庭に生まれたエイミーは、10代でレコード会社と契約を結び、弱冠20歳で完成させたデビュー・アルバム『Frank』で大きな評価を得た後、続くセカンド・アルバム『Back To Black』が全世界1200万枚のセールスを記録、シングル「Rehab」も大ヒットし2008年のグラミー賞で5部門受賞を成し遂げた若き天才シンガーです。
映画では全編を通して彼女の楽曲が流れ、ブルーノ・マーズなどをプロデュースするマーク・ロンソンやアメリカ音楽界の大御所トニー・ベネット、ラッパーのヤシーン・ベイ(元モス・デフ)らが出演。本物のミュージシャンとしてのエイミーの魅力を解き明かします。
複雑な家庭環境や激しい恋愛関係など、自身の人生体験を糧に独自の音楽をつくりあげ、人生をひたむきに駆け抜けたエイミー・ワインハウスの姿は、ビリー・ホリデイジャニス・ジョプリン、カレン・カーペンター、ホイットニー・ヒューストン等、ポピュラー・ミュージックの世界で一時代を築きながら悲劇的な最期を遂げた女性シンガーたちの光と影を想起させます。でもその素顔は、歌うことが大好きで友だちや恋人と人生を楽しむ普通のひとりの女の子。そんな彼女がなぜ“孤高の歌姫”として波乱の道を歩んでいくことになったのか?

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★★

感想
 エイミー・ワインハウスの人生、特に、彼女が生み出した作品の背景と、なぜ彼女が死ななければならなかったのか、ということを、プライベートや未公開映像含め、様々な関係者のインタビューで明らかにしている、とても優れたドキュメンタリー作品でした。

 もし、エイミー・ワインハウスの歌を聴いたことがなくて、ファンでも何でもないとしても、この作品の中に出てくる歌を聴けば、エイミー・ワインハウスの圧倒的な歌唱力と、表現力の素晴らしさは分かってもらえると思います。

 エイミー・ワインハウスが生きていた頃、特に晩年には、彼女の「奇行」ばかりが日本でも報道され、「変人」扱いされていました。
 この映画では、単に彼女の素晴らしさだけをたたえるのでもなく、なぜ彼女が「奇行」を繰り返すことになったのか、決定的な判断は観客に任せながらも、関係者のインタビューと当時の状況を映し出すことによって明らかにしています。

 僕の言葉で簡単に言えば、エイミー・ワインハウスが27歳で死ぬことになったのは、彼女の周りにいた、彼女に最も影響を与えた2人の男がクズだったからです。
 1人は父親で、エイミーが売れると、彼女の心身の調子を最優先するのではなく、彼女が稼ぐお金を優先しました。
 リハビリ施設への入所にエイミー自身が同意したのに、父親が同意せず、「パパが大丈夫って言っているから」と結局入所せずに、どんどんひどい情況になっていきました。
 その様子は、グラミー賞も受賞したRehab(リハブ=リハビリ施設)の歌詞に現れています。

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 また、結婚することになるブレイクは、ドラッグ漬けで、エイミーにドラッグを教え、提供し続けました。
 彼がいなかったら、前述のRehabもBack To Black(バック・トゥ・ブラッグ=暗闇(薬漬けの日々)に逆戻り)も生まれなかったでしょう。
 
 父親と恋人という2人のクズがいなければ、これらの歌が生まれることはなく、ひどい情況だからこそ作り出せた歌です。
 けれど、その結果、心身がボロボロになり、死んでしまった。

 ある種の芸術にはこういうひどい情況を昇華させることによって生み出されることがありますが、それでも悔やまれるのは、エイミー・ワインハウスが作り出した楽曲そのものも名作ではあるものの、彼女の歌そのものが他に類を見ないものだったことです。
 ハスキーで、こんな華奢な身体のどこから出てくるのか分からない深いところから出される声は他に聞いたことがありません。
 彼女が歌えばどんな曲であっても人々を魅了するし(だからこそジャズバーで歌っていた16歳の時にスカウトされた)、1度聞いたら忘れることが出来ない圧倒的な力を持っていました。
 その才能が失われてしまったことは本当に残念なのだけれど、それと同時に、クズに振り回されていても結局彼らから離れられないという彼女の苦しみは個人的に共感出来るものが沢山あって、27歳でその苦しみから解放されたことを羨ましくも感じました。
 僕はそれから7年も経つけれど、いつ終わるのだろう、と。