映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

与田基俟『あたらしい家族ができました。』

 週に1度必ず訪れる新聞の書評を毎回楽しみにしています。
 書評では単行本が多いので、小さく載っている文庫や新書の他、毎回ではないけれど載っている漫画の書評が結構楽しみです。
 そこで、タイトルからして、ちょっと気になる漫画が紹介されていました。
 

(コミック)『あたらしい家族ができました。』(1) 与田基俟〈著〉:朝日新聞デジタル


 書評を読んで気になったものの、まだ一巻しか出ておらず、実際に手に取るかどうか悩みつつ調べてみたら、ネットで公開されていました。
 

あたらしい家族ができました。 - pixivコミック | 無料連載マンガ

 
 ここで人気が出たので、出版されるようになったようなのですが、公開されていた全部の話を読んでみたら面白かったので、改めて漫画も手に取って読んでみることにしました。
 


あたらしい家族ができました。: 1 (comic POOL) Kindle版

 

  物語の内容は、父親を亡くし、叔父の家に引き取られることになった主人公の碧(あお)と、叔父である春軌(はるき)の物語です。
 叔父とは疎遠だったようで、碧の前に現れる叔父が女性の姿をしていたことに戸惑いつつも全身で彼女を受け入れる春軌と、それに少しずつ安心感を覚え、同時に春軌のことを理解しようとする姿が描かれています。

 まだ詳しく語られていない母親のことや、父親から託されて碧を引き取るほどの関係にも関わらず、今まで疎遠だったという設定には多少無理を感じるものの、ある意味でほとんど接点のなかった状態から「家族」というものを築き上げていく様子は、「家族」というものを考えさせる内容になっているように思います。
 また、もちろん驚きはするものの、初めて春軌を前にし、その存在を同級生たちにどの程度知られて良いのか悩む様子は、「女装している叔父」を知られたくないというものではなく、春軌がどのように受け止めるだろうか、ということが碧にとっての悩み中心になっていて、そのような描かれ方が、新しい時代に入ったのかも知れないと思いました。

 今までの社会では、「異質な他者」をどのように不特定多数の人たちに受け入れてもらうか、ということに焦点が当たっていたのが、この作品では「異質な他者」とされている人が不特定多数の人たちにその存在を知られたときに、その本人が「どのように感じるのか」という点に焦点が当たってます。
 その焦点の当たり方が、「異質な他者」という存在がいるということを前提にしているという点で、新しい時代に入ったのかも知れないと思ったのでした。

 これから母親や祖父(父と叔父春軌の父)との関係も描かれるようなので、どのように展開するのか楽しみにしたいと思います。