映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』

 年末になると、というか、音楽だったり本だったり、映画だったり流行語だったり、いろんなものが1月以上残して一年の締めくくりをし始める様子を見て、今年も終わるんだな、と実感します。
 まだ11月だったと思うのですが、Web本棚サービスのブクログが大賞を発表していて、その中のフリー部門大賞ということで選ばれていたのがこの作品です。
 cakesでの連載や単行本出版の時に話題になっていたのは知っていたもののスルーしていましたが、文庫が出ると言うこともあってか再度話題になっていたので読んでみました。


ボクたちはみんな大人になれなかった Kindle版

 

ボクたちはみんな大人になれなかった|燃え殻|cakes(ケイクス)

内容(cakesより)
2016年まで生き延びた42歳のオッサンであるところの、ボク。1999年、ド底辺のお先真っ暗な二十代のガキであるところの、ボク。どっちもしょうもないけど、なんでだかあの頃が、最強に輝いて思える。夢もない、希望もない、ノーフューチャーなリアルに「最愛のブス」がいただけなのに――

勝手に五段階評価
★★★☆☆

感想
 世代的には自分より10歳くらい上、元配偶者と同じ世代の男性が主人公の物語です。
 特定の恋人や家族がいるわけでもない42歳になった男性が、ふとFacebookで目にした20代を一緒に過ごした元恋人を見つけ、そのときのことを振り返る内容です。

 とても読みやすく、さらっと読めました。
 けれど、物語としては、過去の出来事を振り返るということがメインになっているので、これでもかとその当時流行っていた歌だとか時時だとか、あるいは今の例えば「Facebook」だとかいう特定の言葉が出て来すぎて、懐かしさを覚えるよりも、無理矢理その当時の様子を思い浮かべさせようとしてくるようで、後半は疲れてきてしまいました。

 40代になって、特定の恋人や家族がいるわけでもなく、かといって仕事もバリバリこなしている訳でもなく、これからも続けていくかはわからない。
 特定の恋人や家族がいなくてもそれをネガティブに捉えたり、あるいは「達観」しているわけでもない、というのは、外観としては、確かにシングルの40代男性の姿を現しているようで、それは絵が似ているだけで中身が伴っていないように感じました。

 世間では女性ばかり結婚年齢や出産年齢について触れられるものの、男性だって年齢を重ねればこのまま1人なのかと不安になったり、あるいはもうそれを諦めたりして乗り越えるわけで、ただなんとなく過ごしていたらあっという間に社会に出て20年経っていました、というのは、あるんだろうか、と。
 初めて付き合った彼女のことが忘れられず、他の人との結婚は考えられません、と言うことだとしても、それはそれで、それについてもっと触れたり、20年の間で考えたことを描いてあれば、もっと「今」の主人公の気持ちやなぜそうして過ごしているのかも分かった気がします。