映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

山里亮太『天才はあきらめた』

 ラジオなどで何回かこの本の話題を聞き興味を持ったところ、文庫だったので手に取って読んでみました。
 


天才はあきらめた (朝日文庫) Kindle版

 

朝日新聞出版 最新刊行物:文庫:天才はあきらめた

内容朝日新聞出版紹介ページより)
今日も妬み嫉み恨みつらみが止まらない! 南海キャンディーズ山里亮太は負の感情をどうやってガソリンに変えてきたのか? 自分は天才じゃないと悟った瞬間から地獄のような努力がはじまった。格好悪いこと情けないこと全て書いた芸人の記録。

勝手に五段階評価
★★★★☆

感想
 今回文庫になって話題になったようですが、元々は12年前に書かれた『天才になりたい』を加筆・修正したものです。
 『天才になりたい』を読んでいないので比べることは出来ませんが、南海キャンディーズとしてデビューに至るまでの過程、デビューしてから2018年までの、しずちゃんとの関係などにも触れられています。
 タイトルの通り「天才はあきらめた」というものの、この中で繰り返し書かれているのは、天才ではない自分はどう努力してきたか、どう努力するか、ということです。
 この「努力」の様子自体が「天才」だと僕は感じるのですが、そのように言われること自体も著者は否定し、努力する糧としていくのだと思います。

 この本の中でとても良いな、と思ったのは、負の感情を努力のための「ガソリン」と捉え、書いている点です。

 いつかこの人に全力で嫌な言葉を浴びせてやる。今はできない。今したら終わりだ。いつか覚えとけよ……。僕のノートには、その日のこのやり取りと、その人を罵倒するために自分が頑張らないといけないことをびっしり書いた。
 その日のためには、そいつからされるダメ出しも真摯なふりして聞けたし、媚びることもできた。むしろ、そいつはいつか俺に逆襲される種を必死で蒔いて水をあげてる愚かな奴!くらいの気持ちだった。そう考えるようにしてからは何の苦痛もなかった。
 先に言うと、そのノートに書いた罵倒は2004年のある日のあとに、そいつに言えることになる。

 
 ものすごく嫌なこと、悔しいことがあったとき、それをぐっとこらえる。
 多くの人はただこらえて終わるかもしれませんが、山ちゃんはノートに書いて決して忘れないようにし、それをガソリンにして努力へと変換する。
 もしかしたら、「陰湿」と揶揄されるかも知れないそのような出来事も公にしている姿がとても良いな、と思いました。
(「陰湿」だと揶揄する人がいたとしたら、そもそも山ちゃんの「ガソリン」にするようなひどいことをしなければ良いだけ)

何か一つ自信が持てるものさえあれば、他のマイナスの要素をプラスに転じさせることができる。

 
 この言葉も、山ちゃんが努力してきたからこそ、努力に裏打ちされたものだからこそ、一つでも自信が持てるものがあれば良いということで、何の努力もなく自信が生まれる訳ではない。
 南海キャンディーズがテレビに出てきて漫才をしている最初期しか芸を観た記憶がなく、ここ数年M-1に出ていたことなど知りませんでしたが、テレビやラジオでいることが当たり前のような存在になっても、努力を続けているということにも、やはりこの人は「天才」だな、と感じました。

 あと、「解説」を書いているのがオードリーの若林さんで、1度その文章を読んでみたいと思っていたので、読めて良かったのと、内容も愛情に溢れていてとても良かったです。