映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「LION/ライオン 25年目のただいま」

 名前も知らなかった作品なのですが、Amazonでのレビューの数も多く、評価もかなり高かったので見てみました。  


LION/ライオン 25年目のただいま(字幕版)

 

youtu.be


映画『LION/ライオン ~25年目のただいま~』公式サイト


作品データ映画.comより)
監督 ガース・デイビス
原題 Lion
製作年 2016年
製作国 オーストラリア
配給 ギャガ
上映時間 119分
映倫区分 G

ストーリー(公式サイトより)
オーストラリアで幸せに暮らす青年サルー。しかし、彼には隠された驚愕の過去があった。インドで生まれた彼は5歳の時に迷子になり、以来、家族と生き別れたままオーストラリアへ養子にだされたのだ。成人し、自分が幸せな生活を送れば送るほど募る、インドの家族への想い。人生を取り戻し未来への一歩を踏み出すため、そして母と兄に、あの日言えなかった〝ただいま″を伝えるため、彼は遂に決意する。「家を探し出す―」と。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★★

感想
 ストーリーにあるように、インド出身のサルーがある日迷子になってしまいます。
 コルカタカルカッタ)に流れ着いた彼は、そこでサルーと同じように保護者がいない孤児院に入れられ、家族を探してもらうのですが見つからず、オーストラリア人夫妻に養子として迎え入れられます。
 大学で学ぶために実家のあるタスマニア島から離れて生活するようになったある日、インドでの幼いころの記憶が蘇ってきます。
 その蘇ってきた記憶を元に、友人の助言でGoogle earthで探し続け、身も心も人間関係もボロボロになった数年後にようやく見つける、という実話を元にした物語です。

 前半は5歳の少年サルーがインドで家族と暮らしていた様子や、迷子になる経緯が描かれるのですが、僕も1度インドを訪れたことがあるので、そのときの記憶が鮮明に蘇ってきました。
 僕が旅した時でさえ、迷子になるという不安がありましたが、5歳の少年なら当然のことで、エンディングクレジットによれば、インドでは毎年8万人の子どもが迷子になっているそうです。

 その後、親切にしてきた女性もいたのですが、不穏な雰囲気を感じ取り逃げ出す様子や、野宿をしながら街中をさまよう様子、そして、あたかも刑務所かのような孤児院での様子が描かれています。
 1980年代後半のこととは言え、ここで描かれている出来事は、日本でもインドでもあまり改善していないようにも感じます。

 その後、オーストラリアへ行き、20年の経過の後、インドの家族を探し始めることになるのですが、印象的なのは、もう1人の養子であるマントッシュの様子です。
 彼がどういう経緯で家族と離れてしまったのかは描かれていませんが、オーストラリアに来たことで益々彼は混乱してしまったようで、大人になってからも精神的に不安定な姿が描かれています。

 マントッシュを「おかしな人」と見ることは簡単ですが、むしろ幼い時に強烈な悲しみを体験していることを考えれば、当然の行動のようにも感じます。
 サルーは、インドの家族を捜し求めることに夢中になるけれど、誰にもその胸の内を語らないことで、恋人との関係が壊れるものの、精神的には落ち着いていて、人と関わることや、社会との関わりを拒否することなく、今いるオーストラリアという土地で、今の両親のもとで生きていくことを素直に受け入れています。
 むしろ、そのようなサルーのような人の方が、まれな、その後家族を見つけ出すことが出来たり、インドの母親とオーストラリアの両親との関係が良好に行くなど、幸運なのだと思います。

 インドの母親との再会や、迷子になったときに一緒にいた兄についての知らせを受ける場面では涙が出て来るような感動的な場面ではあったものの、同時に、やはり毎年8万人もこのような子どもたちが出てきていて、サルーのような人はその中のごく限られた存在であるということを忘れてはならないと思います。