映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「最低。」

 物書きとしても注目を浴びているAV女優の紗倉まな
 彼女が発表した最初の小説『最低。』を映画化したのが今回の作品です。
 小説の評価が高いのでいつか読もうと思いつつ、結局まだ読めていないので、Amazonプライムで観られるようになったこの作品をまず観てみました。

 


最低。

 

youtu.be

 

映画『最低。』オフィシャルサイト

 

ストーリー(オフィシャルサイトより)
橋口美穂(森口彩乃)、34歳。何不自由なく暮らしているものの、どこか満たされない日々。夫の健太(忍成修吾)は何事にも無関心で、子供が欲しいと提案しても忙しい仕事を理由に断られる。最近は病に伏した父を姉の美沙(江口のりこ)と交代で見舞うため、家と病院を往復する毎日。このままずっと同じような生活が続くのだろうか……。そんな空虚な思いを埋めるため、美穂が決心したのはAVに出ること。今までずっと安定志向だった自分の人生を、ひょっとしたら変えることができるかもしれない。そう信じて彼女は新しい世界の扉を開けるが――。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★☆☆

感想
 AV女優になろうとする1人の女性と、既にAV女優として活動している女性、そして、母親が元AV女優だったのではと噂されている高校生という、3人の女性の物語が同時並行的に進んでいきます。
 AV女優の作品なので、セックスシーンや裸のシーンは沢山出てくるのですが、欲情を煽るような描写ではなく、作品を作る過程が映し出されるので、映画やテレビ番組を製作している様子の中に、セックスシーンがある、というような感じでした。

 足りないわけではないけれど、満たされてもいない生活を送る女性が、パートナーとの関係に変化を持たせようという気持ちもありAVに出ようとする流れや、ふとしたきっかけでAV女優になり、人気が出てそのまま続けていたけれど、家族に知られ反対され、新しく出会った人に知られたらどう思われるだろうかと逡巡する様子、そして、自分が誰の子どもなのかも分からず、けれど母親はAVに出ていたと言われて、それらをどう受け止めたら良いのか分からずにいる高校生の様子と、3人の女性たちの姿を丁寧に描いている印象を受けました。

 けれど、何かしら物足りなさを感じる部分もあって、それは何かというと、「そんなに簡単なものなのか?」という疑問です。
 簡単というのは、応募してすぐに出演できるという流れもそうですし、ある程度の期間出演し続けることが出来ていることだったり、近しい人に知られた時へのおそれに対してです。

 それぞれ違った立場の3人の女性を描くことで、簡単なものではない、ということが一定程度示されてはいるとは思うのですが、それでもやはり、「そんなに簡単なものなのか?」と思わざるを得ませんでした。

 仮に出演が簡単にできると言うことであれば、新規参入が激しい業界ということで、出演を重ねることは難しくなるでしょうし、更に今の時代、一回出演してしまえば、永遠に映像は残り続け、一回決心して振り切って出演したとしても、その後の人生への影響を考えれば、出演することへのデメリットの方が圧倒的に大きいと思うのです。
 なので、丁寧に女性たちの姿を描いてはいるし、欲情を煽るようなものでもなく、それらの点は良いのですが、それでも物足りないな、と感じました。