映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

姫野桂『発達障害グレーゾーン』

 確かTwitterだったような気がするのですが、気になるタイトルの本が流れてきたので、出版してから間がなかったので、レビューなどはまだついていなかったのですが、手に取って読んでみることにしました。
 気になった理由としては、以前、元配偶者から僕が「発達障害なのではないか」というようなことを言われた経験があり、その言葉に今も囚われているからです。
 特に深刻な症状や悩みがあるわけではないのですが、「もしかしたら」という疑念は自分自身で拭い去れず、「グレーゾーン」という言葉がもしかしたら自分に当てはまるかも、と思いました。
 


発達障害グレーゾーン (SPA!BOOKS新書) Kindle版

 

発達障害グレーゾーン|書籍詳細|扶桑社

内容(扶桑社ホームページより)
 近年、NHKが特集するなど話題になることが多い「大人の発達障害」。
 しかし、発達障害の“傾向"を指摘されながら、正式な“診断"には至らない「グレーゾーン」と呼ばれる人たちが相当数いるのをご存じでしょうか。彼らの多くは「クローズ就労(=会社には隠した状態)」で働き、「家族や友人にもなかなか理解してもらえない」という困難を抱えたまま暮らしています。そして、「自分もそうかも?」と思う人は、かなりの確率でこのグレーゾーンに当てはまる可能性があるのです。
 今では発達障害に関してさまざまなコンテンツが生まれていますが、グレーゾーン(成人)にフォーカスしたものは、ほぼありませんでした。そこで著者の姫野桂さんは「グレーゾーンを可視化する」という試みを始めます。当事者インタビューや当事者会への参加、精神科医、就労支援団体などへの取材を通じて、グレーゾーンとは何か?なぜこれほどまでに生きづらさを抱えるのか?を解き明かしていきます。
 また、本書ではこれまで著者が見聞きした、発達障害の当事者やグレーゾーンの人が実践する「ライフハック」も収録しています。発達障害について知りたい人や、発達障害らしき症状に悩んでいる人にとって、少しでも生活向上のヒントになってくれたらうれしいです。

感想
 元配偶者からの「発達障害っぽい」という言葉に今も尚僕自身が囚われているのですが、その呪縛に対しての一番シンプルな答えが載っていました。

私も当事者の一人として、もし、これを読んでいる人のなかに発達障害の方がいたとしても、「発達障害だからといって極度に落ち込む必要はない」と言いたい。発達障害は能力の偏りがあるという事実のみで、それ以上でもそれ以下でもないと、個人的には思っているからだ。

また、発達障害の特性や重軽の程度は人それぞれなので「仕事の納期を守れないから発達障害だ」「遅刻癖があるから発達障害だ」などと、単純に当てはめればいいという話でもない。発達障害はグラデーシヨン状の障害であるため、「ここから先が発達障害でここまでが健常者」という、はっきりした線引きがないことを知っておいてほしい。

 
 特にこの本で触れられる「発達障害」に関していえば、一般的にも認知されるようになってきたのは、まだここ10年くらいの出来事です。
 「発達障害」という言葉や認識がなかったときにどうしていたのか、というと、悩んでいたり困っていた人も当然いたのだろうけれど、逆に言えば、それでも生活していけていたということです。

 つまり、「発達障害」という言葉と認識が広まったことで、多くの人が当たり前に出来ている(ように見える)ことが、自分には出来ないという理由が分かったりして、救われた人がいる一方、「能力の偏り」と周囲に受け止められていた人も、ちょっとした出来事でも「発達障害なのではないか」と言われ、当事者が悩むようになってしまったのではないかと思います。

 自身も「発達障害」だと認識している精神科医の西脇俊二さんの言葉が印象的でした。

障害者手帳を取るために診断はするけれど、はっきり言ってしまえば、そんなのはどうでもいいことなんです。「困っていることがあればこうしよう」という話のほうが重要で。診断と困りごとの解消法、その両方を教えてくれる人が必要です。詳しくない医師たちは発達障害の人を診ても「しばらく様子を見ましょう」と言うしかない。


 診断が必ずしも必要ないとは言わないけれど、やはり重要なのは「困りごとの解消法」です。
 例えば僕はメガネをしていないと生活に困るくらい目が悪いのですが、普段はメガネをしているので特に困らずに生活出来ています。
 それは、メガネをするという解消法があるからです。
 メガネをするという解消法がなければ途端に殆どのものが見えなくなり、生活の様々な場面で「困りごと」が出てくるでしょう。

 なので、僕にとっては、診断名がつくかどうかよりも圧倒的に重要なのは、「困りごとがあるかどうか」、もし「困りごと」があるのなら、その解消法はどんなものがあるのか、ということです。

 僕自身が何に困っているのかというと、一番困っていたのは、イライラすることでした。
 そのことについて、西脇医師は自身もかつてキレてしまいやすかったという経験を踏まえ、こんな具体策をあげていました。

「自分に期待しない」
「他人に期待しない」
「自分は努力をする」
この3点に工ネルギーを注ぐべきです。期待が裏切られたり腹が立ったりする感情が動くから、ストレスが増えてしまう。自分には「できること/できないこと」が多いので、過度な期待をしないこと。また、自分は努力をして変わることはできるけれど、他人を変えることはできないじゃないですか。大抵の人は相手に期待して相手が変わらないと文句を言っていて、そんなのは永遠に続くわけです。だからやめましょうと。


 イライラしないために、「他人に期待しない」という言葉は何回か聞いたことがあったのですが、「自分に期待しない」というのも大切だな、と思いました。
 何かの(多分多くの人にとってはなんでもないような)出来事でもものすごく大きなダメージを受けてしまうことがあります。
 それはなぜかと言えば、「自分に期待している」からです。
 自分が不完全なもので、いろいろ間違いを犯すということを分かって期待しないでいいれば、大きなダメージを受けることもありません。
 ここで重要なのは、自分にも他人にも期待しないで、流されるままということではなく、「自分は努力する」ということも含まれている点です。
 「自分にも他人にも期待しないが、自分が出来ることはする」。

 最近、いろいろと落ち込んでしまう出来事があって、以前ならそのダメージでもう何もかも投げ出してしまいたくなったり、無気力になることがありましたが、自分にも他人にも期待せず、だけど努力はし続ける、という言葉を思い出すと、今までとは違って、少しダメージが軽くなったような気がします。