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映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密」

 最近Amazonプライムで観られるようになった作品で、知らなかった作品だったのですが、レビューの評価が高かったので、観てみました。
 あとでも触れますが、邦題はどうかと思います。
 邦題に対する批判的なレビューを読んだ上で観ましたが、そのレビューを読まなかったら観なかったと思います。
 


チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密(字幕版)

 

作品データ映画.comより)
監督ショーン・ベイカー
原題 Starlet
製作年 2012年
製作国 アメリカ・イギリス合作
上映時間 103分


内容(映画.comより)
ロサンゼルスを舞台に、若きポルノ女優と孤独な老婦人が織りなす交流を描いたヒューマンドラマ。女優を目指しながらポルノ女優として働くジェーンは、愛犬のチワワや同業の友人メリッサらと一緒に暮らしていた。ある日、ガレージセールでポットを購入した彼女は、その中から1万ドルもの札束を発見する。ジェーンは売主の老女セイディのもとへお金を返しに行くが、ポットを返品しに来たと勘違いされて門前払いされてしまう。困ったジェーンは偶然を装ってセイディに近づき、買い物の送迎をしたり一緒にビンゴゲームに出かけたりするようになるが……。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 原題は”Starlet”で、意味は「売り出し中の女優」(ジーニアス英和辞典)です。
 オックスフォード現代英英辞典では”a young woman actor who plays small parts and hopes to became famous”と「有名になることを夢見ながら小さな役を演じている若手女優」といった説明がされています。

 この”Starlet”、主人公ジェーンが飼っている犬の名前にもなっています。
 なので、邦題の「チワワは見ていた」を付けたのでしょうが、このタイトルには2つの意味で間違っていると思います。
 それは、明らかに物語では”Starlet”は主人公ジェーンを指していることと、ジェーンの愛犬”Starlet”は純粋なチワワではないからです。

 物語の中でも「チワワ」と呼ばれていますが、ジェーンがセイディに説明するように、保護施設から引き取った犬で、純粋なチワワではなく、チワワと何かがミックスされているように見えます。

 そして、邦題に関してもう一つ、サブタイトルにある「未亡人」という言葉です。
 この邦題を付けた人は「未亡人」という言葉の意味を考えたことはあるのでしょうか?
 広辞苑によると「(まだ死なずにいる人の意で、本来は自称の語)夫と死別した女性。寡婦。ごけ。びぼうじん。」となっています。
 「未だに亡くなっていない人」という、最悪な言葉をなぜこの物語のタイトルに付けたのでしょうか?
 物語の最後では、セイディがジェーンにしていた嘘というか、秘密が明らかになるのですが、そのラストまで観た上でこのタイトルを付けたのでしょうか?

 邦題に対してこれほど怒りを覚える作品はありませんが、邦題以外の肝心な物語の内容はとても良かったです。
 ジェーンがセイディに近づこうとするきっかけや、セイディが近づいてくるジェーンに警戒する様子、2人とも秘密を持ったまま、中々言えないことを抱えつつも、少しずつ近づいていく関係。

 先日、友人に言われた言葉を思い出しました。
 「黙っていていいんだよ。言いたくないことは。」

 お互いにそれが分かった上で、言いたければ言えば良いし、打ち明けられたらちゃんと受け止める。
 年齢やそれまで過ごしてきた経験は全く違っても、人と人とが出会って親密になるということは、こういう丁寧なやりとりの積み重ねが大切なんだよな、と改めて実感させられる作品でした。