映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

親が高齢で良かったと思ったこと

 この1年、僕の今までの人生の中で「どん底」とも言える日々を過ごしてきました。
 ある程度の荷物を持っていくことは出来たものの、お金もなく、仕事もなく、家族も失い、おまけにというかどっちが鶏の卵か分かりませんが、うつ病も患い、何度となく死のうとしました。

 けれど、その「どん底」から少しずつ、病院に通ってうつの状態と睡眠を安定させることから始め、家族は失ったままですが、2ヶ月に1回くらいは子どもたちに会えるようになり、(元配偶者が財産分与に応じないこともあり)お金はなく、増える見込みもないけれど、なんとか今までよりは安定した仕事も見つけることが出来、少しずつ這い上がっていくことが出来ました。
 これは色んな人たちの支えがあったからで、パート先で親しくなった2人の女性もそうですし、以前からの友人の何人かは実際に時間を作って会ってくれたり、連絡をくれました。

 彼らがいなければ、今もまだどん底にいたと思います。

 そして、彼らと同じように僕が助けてもらったと思っているのは、両親です。
 僕は、今では都市部ではそこまで珍しくなくなってきたかもしれませんが、両親が割と高齢になってから生まれてきた子どもです。
 同級生や同年代の人たちの親と比べると10歳は年上です。

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 小さい時(幼稚園だったり、小学生の時)は、その、両親が年を取っているということをイヤだと思っていました。
 また、両親は僕にそんなことは全く言いませんでしたが、父の定年退職が数年後だと分かっているにも関わらず、学費の高い私立の学校に通って良いのかどうか、僕はかなり悩みました(出身高校は父の、出身大学は両親の母校だったので快く通わせてくれましたが)。

 それもあって、僕は早く自立しなければ、自分だけで生きていけるようにしなければと、中学生くらいの時から思っていました。
 実際に、大学卒業後すぐに結婚し、自分の家庭を持つようになり、両親が両親の同年代の人たちと同じような、子どもたちが自立した生活をし、幸運なことに孫もいるという状態になったことで、少しは安心させられたかなと思っていました。

 けれど、それから12年経って、出て行った時よりもひどい状態で僕は戻ってきてしまいました。
 両親からすれば、年老いて年金で何とか暮らしているところに、僕が何もないばかりか、病気までして、死にたいと言って、戻ってきたわけです。

 そんな息子に対して、両親がどうしたかというと、同じ言葉を繰り返し何度も言ってきました。 

まだ若いんだから、大丈夫 

 
 60歳くらい生きれば十分だと思っていた僕にとって、30代半ばで振り出し(というかマイナス)になり、これからまた最初から何かを築いていくのは、考えるだけで正直かなりきつかったのですが、両親は何回も繰り返し「若いから大丈夫」と言ってくれました。

 何回も言われている内に、最初に書いたように少しずつ這い上がることが出来てきたことで、自分でも「(今が自分史上一番年を取っているので、若いとは思えないけれど)なんとかなるかもしれない」という気持ちになって来ました。

 両親からしてみれば、両親が僕の今の年齢の時、まだ僕は生まれておらず、本当に「若い」と思っているのだと思います。
 だからこそ、「まだこれから」「大丈夫」、と言ってくれているのだと思います。

 両親だからということではなく、幸運なことに、お金は十分とは言えないし、少し困る時もあったけれど、なんとかなって来たし、大病することもなく、この年齢まで生きてきたという「とりあえずなんとかなって長く生きてきた人」だからこそ、説得力みたいなものがあるのかな、と思います。