映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「愛の小さな歴史」

 映画を観る(主に時間的)余裕がなくなってきている中でささっと観られるものをと思っていたら、レビューの評価もそこそこ高く、短かかったので観てみた作品です。 

 


愛の小さな歴史



youtu.be

 

愛の小さな歴史 | Tokyo New Cinema Inc. | ヒトを豊かにする映画

 

作品データ映画.comより)
監督 中川龍太郎
製作年 2014年
製作国 日本
配給 Tokyo New Cinema
上映時間 81分

内容(Tokyo New Cinema Inc.より)
真夏、東京の片隅。食品の配達で生計を立てる夏希と借金の取り立てを生業とする夏生。ふたりの胸の内に捨てたはずの父と妹の面影が不意によみがえる。長らく離別していた家族を訪ねたふたりは、十数年来の「家族」をやり直そうとする。父娘、兄妹、それぞれの距離は次第に縮まりつつあったが…。この映画では、誰かと共に生きようとする人間の動態を、美しい自然の情景と音、そして静かに流れるラフマニノフの旋律が包み込み、一種の「予感」が演出されている。小さいかもしれないが、ひとつの生命が別の生命と確かに触れ合い、そして巡っていく、その愛の小さな足跡がここにはある。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★☆☆

感想
 二組の「家族」の出来事が同時並行で描かれます。
 幼少期に父が酒に溺れ、タバコの火を胸に押しつけられた思い出だけが残る女性(夏希)と、闇金の取り立てをしている男性(夏生)。
 女性の方は、ある日「金を貸した」という男が職場に現れたことで「父」の生存を知り、会いに行く。
 男性の方は、突然、覚醒剤(コカインっぽい)に溺れ、性行為にふける妹の家に向かい、一緒に暮らすと宣言する。

 こうして、それぞれが「家族」としての生活を始めるというものです。
 女性の方は幼少期に別れたままだし、父としても娘と生活し始めてもどう距離を取って良いのかわからない。

 覚醒剤に溺れる妹をどうにか救い出そうと、せめてまともな食事が出来るようにと料理をし、楽しめるようにDVDを借りてきても妹は兄をただやっかいな存在としかみない。
 そして、自分自身の仕事が他者を苦しめているともわかっていて、自分自身の生活も改善したいのだけれども、それよりも妹を優先して振る舞う。

 生きるのが不器用な、生きることが辛い4人それぞれが、それでも少しずつ互いを受け入れ、生活していこうとする。

 こう書くと、とても良い作品に感じるのですが、それでもあまり響いてこなかったのは、現実はもっと大変な気がするからです。
 幼少期に負わされた傷は肉体だけでなく、精神をもむしばみ、苦しめます。
 父の生存がわかったとしても同居に向かうにはステップが少なすぎるように感じますし、薬物依存もそんなに簡単に抜け出すことはできないと思います。


 実際、僕は未だお酒だけは辞めることが出来ていないのですが、誰かに強制的に辞めさせようとされても難しく、前に進んでは戻って、また戻って、戻って、また少し進むという感じだと思います。

 けれど、それぞれの役者の配置はとても良かったと思います。
 光石研だけは、年老いたアル中の元DV親父という感じは受けなかったものの、他の主要な3人は容姿ともとてもはまっているように感じました。