映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「犯罪「幸運」」

 知らなかった作品ですが、Amazonでの評価が割と高かったので観てみた作品です。
 映画.comではレイティングが書かれていませんでしたが、Amazonが表示しているように18+くらいの気持ちで観た方が良いかもしれません。
 


犯罪「幸運」(字幕版)

 

作品データ映画.comより)
監督 ドリス・ドゥリー
原題 Gluck
製作年 2012年
製作国 ドイツ
上映時間 107分

内容Amazonより)
内戦で両親を殺されたイリーナは、ベルリンに流れ着き娼婦になった。愛犬と生活するパンク青年と知り合い恋に落ちた二人。ようやく見つけたかけがいのない幸せ。ところがある日、客が心臓発作で急死。死体を見つけた彼は、死体を隠滅しようとするのだが...。2012年本屋大賞1位を映画化!

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 本屋大賞で1位になった作品が原作だということは全く知らなかったのですが、文庫で出版されています(フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』) 。

 微妙な違いに感じるかと思いますが、最後まで観終わった後に気になったのは、タイトルです。
 「犯罪「幸運」」と日本語ではなっていますが、映画の原題は「Gluck」=幸福とか幸せを意味します。
 この作品で描かれる中には「運」という要素はないので、何故そのまま「幸福」とか「幸せ」、あるいは小説の原題である「Verbrechen」=「犯罪」にしなかったのか、わかりません。

 この作品で描かれている内容は、決して「運」に任せて、「運」に流されて生きる人たちの物語ではなく、毎日毎日を必死で生き抜きながら、ささやかな「幸福」や「幸せ」をつかみ取り、守ろうとする人たちの姿です。

 内線のさなか両親が殺害され、兵士に輪姦され、ドイツにたどりつき、不法難民として、娼婦として生きるイリーナ。
 愛犬バイロンと路上生活を送るカッレ。

 度々目にする内に声をかけるようになり、少しずつ親密になっていく。
 単なる恋愛物語だとすることが出来ないのは、こんなにも沢山の人間がいるにも関わらず、イリーナもカッレも多くの人たちには「無視される」存在だということです。
 殆どの人たちからはそこにいることさえも無視されるような存在であり、実際に無視され続けます。
 だから、多くの人たちがいる中での出会いではなく、社会から、あるいは人々から無視されている人同士が出会い、惹かれていく、という物語で、単に出会って惹かれ合っていく恋愛物語とは一線を画しています。

 また、一線を画しているのは、少しずつ生活が良い方向に進んでいったと思った後に起きる一連の出来事です。
 この展開が僕にとっての一番のレーティングを18+にした方が良いという内容でした。

 最終的にはハッピーエンドですし、展開的には満足していますが、この日本でこの物語のような展開になることは現実的に難しいだろうな、と思います。
 難民や野宿生活者というような「異質な他者」に不寛容な社会である日本では特に。