映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「君の膵臓をたべたい」

 小説が発売された当初、駅の構内にある本屋さんで前面に展開され、そのタイトルからどういう小説なのか気になったものの、天邪鬼なので、あっという間にヒットしてからは逆に興味がなくなり、小説も読まずじまいのままでした。
 ですが、映画(実写版)がAmazonプライムで観られるようになっていたのと、評価が高かったので観てみました。

 ちなみに、見ている時に何となく既視感があり、その後の展開も知っている感じがしたのですが、記録にもなかったので、書いてみます。

 


君の膵臓をたべたい

 

作品データ映画.comより)
監督 月川翔
製作年 2017年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 115分
映倫区分 G

あらすじシネマトゥデイより)
高校の同級生・山内桜良(浜辺美波)がひそかにつづる闘病日記「共病文庫」を偶然見つけた僕(北村匠海)は、彼女が膵臓(すいぞう)の病気で余命わずかなことを知り、一緒に過ごすようになる。彼女の言葉をきっかけに母校の教師となった僕(小栗旬)は、桜良が亡くなってから12年後、教え子と会話をしていた際に、桜良と過ごした数か月を思い出す。一方、結婚を控えた桜良の親友・恭子(北川景子)も、桜良との日々を思い返し……。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★★

感想
 どこをどう切り取っても、映画になるような展開の青春時代を送った経験がないからか、いわゆる青春時代の恋愛とか、体育会系のノリが苦手なので熱血ものとかは敬遠しているのですが、この作品はとても良かったです。

 良かった点としては、膵臓の病気を患っている桜良自体は秋波を送っているにせよ、それに全く気付かずにいる「僕」が穏やかに友情を育んでいく、という点です。
 こんなにも秋波を送っているのに気付かないなんて!と怒ったり、あるいはここまで秋波を送っていれば恋愛に発展するでしょう!という意見もあるかもしれませんが、僕としては、友情のままで終わった、という点がとても良かったです。

 クラスで目立たず、殆どのクラスメイトからは名前さえ覚えられていないような「僕」が、クラスの人気者の女の子が余命幾ばくもないという「秘密」を知ってしまう。
 動揺はするものの、元々それを話す相手もいないし、そもそも仲の良い相手でもないので、誰かに言うこともなく、僕と桜良との間での「秘密」になる。
 桜良は家族以外の誰にも言えなかったことを知ってもらっている安心感から「僕」を誘い、「僕」は身近に迫る死を知っているからこそ邪険にも出来ずに誘いに乗る。
 そして、少しずつ2人の距離が近づいていくが…。

 桜良の「死」が明確に設定されていて分かっているけれども、終始こんな高校生活良いなぁ、とニヤニヤしてしまう内容でしたが、僕の中で一番印象的だったシーンは、「僕」が怒る場面です。
 何故「僕」が怒ったのか、言葉に出来ないこと、手を出すしかなかったこと、けれど桜良を傷つけずに済んだこと、むしろ桜良がそこまでは踏み込んではいけないのだと理解し謝り、関係を修復したこと、それらすべてがとても良かったです。

 「男=力」とか「男=恋愛」とか、だからこそ、「草食系男子」(つまり「男=肉食系が普通」という考え)という言葉があって、そういうあまりにも貧相な男性観が支配している現実が少しずつ変わってきているのかな、と思える展開でした。