ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』
去年からずっと読みたいと思っていた小説をようやく読むことが出来ました。
読みたいと思った理由は、ラジオで数回紹介されていたからで、単行本(は手が出せる値段ではない)なので最初は、読めるのはずっと後かなぁ、と思っていたのですが、今は時間的に中々小説を読む(だけでなく映画を観る)時間があまりない感じです。
とりあえず、紹介されていたのはこれらの番組です。
山崎まどか・岸本佐知子が語る「女子と本」視点【推薦図書多数】(アフター6ジャンクション-TBSラジオ)
イタい妄想女と汚ギャルの共同生活!?ミランダ・ジュライ「最初の悪い男」を書評家・豊崎由美が語る!(荒川強啓 デイ・キャッチ!-TBSラジオ)
新聞でも紹介されていました。
(書評)『最初の悪い男』 ミランダ・ジュライ〈著〉:朝日新聞デジタル
最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス) Kindle版
ミランダ・ジュライ、岸本佐知子/訳 『最初の悪い男』 | 新潮社
著者:ミランダ・ジュライ (Miranda July)
訳書:岸本佐知子
内容(新潮社より)
43歳独身のシェリルは職場の年上男に片思いしながら快適生活を謳歌。運命の赤ん坊との再会を夢みる妄想がちな日々は、衛生観念ゼロ、美人で巨乳で足の臭い上司の娘、クリーが転がりこんできて一変。水と油のふたりの共同生活が臨界点をむかえたとき――。幾重にもからみあった人々の網の目がこの世に紡ぎだした奇跡。待望の初長篇。
感想
ラジオでの紹介や新聞の書評を読んでから大分経ってから読んだということもあり、内容をすっかり忘れていたので、最初はビックリしました。
何にビックリしたのかというと、主人公シェリルの妄想っぷりです。
それは新潮社のページに載っているような「職場の年上男に片思いしながら」とかいうレベルではなく、「痛い女(人)」です。
まぁ、妄想が外に漏れ出さなければ別にどんな妄想を抱いていても構わないのですが、この作品ではその「妄想」を真っ正面からぶつけてくるので、「うわっ!」とビックリするのです。
そして、もう一つビックリするのが1人で快適な生活を送るシェリルの家に突然上がり込んできたクリー。
美人で巨乳だけど、足が臭く、片付けるという概念そのものを知らないような、そして、シェリルとは正反対かのような生活スタイルを送り、シェリルが年上だろうが、お構いなしで(シェリルには)図々しく感じるような態度をとってくる。
シェリルは妄想しながらなんとかクリーと共同生活をしていき、そんな中ある出来事が起きるのですが、それでも相変わらずシェリルの妄想は止まらない。
大きな出来事があったので、一時は関係が一気に縮まるかと思いきや、最初から年齢も何もかもものすごく合っていなかった2人がそのままずっと仲良く出来るかというと、そんなことはなく、結局それぞれの道を歩んでいく。
この作品が良いな、と思うのは、結局それぞれの道を歩んでいくことにはなったし、シェリルはシェリルでずっと妄想を繰り返し、クリーも「成長」したかは分からないけれど、お互いにとって「未知なるもの」に真っ正面から向き合った、ということです。
その「未知なるもの」に向き合った「結果」が良いか悪いかということは抜きに、とにかく、2人共が「未知なるもの」に向き合ったということ自体がとても貴重なことなのだ、ということです。
「未知なるもの」に出会う機会って実はそうあるものではないし、もしそういう機会があったとしても、「未知なるもの」が「未知なるもの」であるが故に避けてしまうので、「未知なるもの」と「真っ正面から向き合う」ということはとても重要で貴重な機会なんだということを改めて感じました。