映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「くちびるに歌を」

 Amazonでの評価が高かったので観てみた作品です。 


くちびるに歌を

 

くちびるに歌を | アスミック・エース

 

作品データ映画.comより)
監督 三木孝浩
製作年 2015年
製作国 日本
配給 アスミック・エース
上映時間 132分
映倫区分 G

内容アスミック・エースより)
長崎県五島列島へ、代理の音楽教師のとして数年ぶりに故郷に戻った柏木ユリ。嫌々合唱部の顧問になった柏木は、明るくふるまう15歳の生徒たちが、実は誰にも言えない悩みを抱え、みんながひとつになる合唱に救いを求めていたことを知る。そして、自らの悲しい過去から弾けなくなっていたピアノにも生徒たちにも向き合うようになっていく。しかし、待ちに待ったコンクール当日、ある事件が起こり…柏木と中五島中学合唱部による、最初で最後のステージの幕が上がる。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 観ている中で分かってきたのは、アンジェラ・アキの「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」にインスパイアされた物語だということです。
 そのことが分かるまでは、代理教師として五島列島の故郷に戻ってきた音楽教師柏木ユリの態度に「それはないだろう」という、若干の怒りを覚える展開でした。
 柏木が何故そんな態度を取っているのか、ということは物語が進んで行くにつれて分かっていくのですが、それでも、教師として生徒に接する態度とは思えないものでした。
 「自分には辛い出来事があったから」という理由で生徒に辛く接することが許されてしまうなら、教師なんかしないで欲しいです。
 産休・育休期間の代理教師だとしても、教師である時点で、教師としては「プロ」として働かなければなりません。
 1年目だろうが、代理教師だろうが、非常勤講師だろうが、生徒にとってはそんなことは全く関係がなく、1人の教師です。
 なので、いくら柏木の過去が明らかになろうとも、「それで生徒への態度が免罪されるとでも?」としか思えませんでした。

 なので、柏木の過去が明らかになったりすることはどうでも良かったのですが、一番良かったのは、合唱部の男子生徒桑原サトルの兄アキオとアキオを演じる渡辺大知です。
 アキオは具体名は出てきませんが、いわゆる「自閉症」的な感じで、渡辺大知がとても上手に演じていました。
 そして、その演技だけでなく、彼の存在がラストになるにつれてこの作品でも絶対に欠かすことが出来ない存在であること、そして彼が欠かすことが出来ない存在だからこそ、他の誰一人として欠かすことが出来ない存在であることが示されています。

 けれど残念なのは、サトルが書いた「手紙」の内容です。
 サトルは、自分には生きる意味が分かっている、それは兄アキオの存在だと考えています。
 兄が1人になることのないように、自分が生まれてきたのだ、だから僕は兄に感謝しているし、生きる意味もわかっていて良かったと。

 でも、両親からは兄アキオがいたから産んだのだということは全く語られておらず、サトルがいわば勝手にそう受け止めているだけです。
 両親は元々2人の子どもを望んでいたかもしれませんし、親である僕が、もしそんなことを子どもに言われたら、すごく悲しく感じると思います。

 親としては、もちろんきょうだいが仲良く生きていってもらえたら良いとは思いますが、「障がい」や「介護」をやって欲しいとは全く思わないし、支えて欲しいとも思いません。
 むしろ、家族だけで支えるのは困難なので、社会とどうつながるかが、親としての自分がいる内に子どもたちに出来ることなのだと思うからです。

 それにしても、アンジェラ・アキの「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」は名曲だと思います。
 邦楽はあまり好きではなく、殆ど聞かなかったのですが、アンジェラ・アキは「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」を聞いてからよく聞くようになったミュージシャンです。
 活動を再開しないかなぁ、と思っています。

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