映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「勝手にふるえてろ」

 観たいと思っていた作品が、Amazonプライムで観られるようになっていたので見てみました。
 


勝手にふるえてろ

 

youtu.be

 

映画『勝手にふるえてろ』公式サイト

 

作品データ映画.comより)
監督 大九明子
製作年 2017年
製作国 日本
配給 ファントム・フィルム
上映時間 117分
映倫区分 G

ストーリー(公式サイトより)
24歳のヨシカは中学の同級生“イチ”へ10年間片思い中!過去のイチとの思い出を召喚したり、趣味である絶滅した動物について夜通し調べたり、博物館からアンモナイトを払い下げてもらったりと、1人忙しい毎日。そんなヨシカの前へ会社の同期で熱烈に愛してくれる“リアル恋変”の彼氏“二”が突如現れた!!「人生初告られた!」とテンションがあがるも、いまいちニとの関係に乗り切れないヨシ力。まったくタイプではない二への態度は冷たい。ある出来事をきっかけに「一目でいいから、今のイチに会って前のめりに死んでいこうと思ったんです」と思い立ち、同級生の名を騙り同窓会を計画。ついに再会の日が訪れるのだが・・・。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 原作は綿矢りさの小説(『勝手にふるえてろ』)だということは知らなかったのですが、小説だったことを知らずに見て良かったと思います。
 僕は綿矢りさと同じ世代で、彼女が高校生で小説家としてデビューし、世間で騒がれていたときに、(僕が通った高校はある程度の成績を残せ、他大学を受験しなかった6割くらいが系列の大学に入学出来たので)、後々一緒に文学部に進むことになった友だちと彼女のデビュー作の『インストール』についてあーだこーだ言っていたことをよく覚えています。
 彼女の作品は他にも『蹴りたい背中』(この作品で芥川賞を受賞)を読みましたが、僕にはどちらも結局自分には響いてくることはなく、それっきり遠ざかったままです。
 (彼女の作品自体と言うよりは、音楽もそうなのですが、日本のものより、海外の作品の方に傾いていったことが大きいかもしれません。)

 で、映画ですが、先日書いたミランダ・ジュライの『最初の悪い男』を連想するような内容でした。
 10年前の中学生の時に一方的に片思いしていた相手への妄想(だけではないのですが)を膨らませながら生きているヨシカ。

 脳内で妄想を膨らませ、その妄想世界がこの作品ではとてもうまく表現されていました。
 本当は話しかけたことすらないコンビニの店員や駅員と話している世界が実は脳内で妄想していただけで、本当は話しかけたことも近くに寄ったこともなかったと分かる。

 ヨシカが何故妄想の世界から出ることになったのかというと、きっかけは同じ会社で言い寄ってきた二(に)の存在です。
 彼がヨシカに半ば無理矢理連絡先を交換し、一緒に出かけるようになり、付き合ってくれと言われることで、ヨシカも妄想していた中学生の時からの片思いの相手一(いち)に会おうと決心する。

 が、そこで妄想はやはり妄想でしかないことが分かり、現実を受け入れていく、という展開なのですが、どうしてもミランダ・ジュライの『最初の悪い男』と比べてしまい、「予想外」の出来事の面白さには欠けると感じてしまいました。

 けれど妄想世界のある意味ぶっ飛んだヨシカ、現実世界で言いたいことを言わずに大人しくしていたかと思ったらいきなり悪態突いたりするヨシカを演じる松岡茉優の演技がものすごく上手でした。
 彼女の演技を見るという一点で見る価値のある作品だと感じました。