映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

息子が通う公立中学校の運動会で組体操の人間ピラミッドをしていた件

 梅雨に入る前、長男が入学した公立中学校で運動会がありました。
 僕が通っていた公立中学校では「体育祭」でしたが、運動会と体育祭の違いってなんなんだろうか、とか思いながら、あるいは、長男の走り方のフォームがいつの間にか綺麗になってるなぁ、とか思いながら見ていたのですが、最後の最後でかなり驚きました。

 驚いたのは、一番最後の種目にあった「組体操」で人間ピラミッドをしていたことです。
 下に載せた写真がそれです。

 

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 一番上の生徒が立った瞬間に大きな拍手が沸き起こっていましたが、僕の中では嫌悪感と何かが起きたらどうするつもりなんだという怒りで一杯でした。

 組体操の人間ピラミッドの何が問題なの?と思うかもしれません。
 この件に限らず学校での事故については名古屋大学准教授の内田良さんが積極的に発信しておられるので、この記事(国連も問題視する「組み体操」が、それでも巨大化しているナゾ(内田 良) | 現代ビジネス | 講談社(1/3))など読んでほしいのですが、僕が今回のような人間ピラミッドに怒りを覚えている点を箇条書きしてみます。

・学習指導要領に載っていない(学校が「勝手にやっている」)
・重大事故発生率が高い(重大事故とは死亡や麻痺、骨折など)
・「成功したんだから」、「感動的」という言葉で美化される
・やりたくない生徒へも強制参加させている

 
 大きくはこの4点です。
 学校、特に義務教育課程では、学校で教えることは明確に決められています。
 その内容は学習指導要領というものに載っていて、それに基づいて教科書が作られ、授業もそれに則って行っています。
 しかし、組体操、ましてや人間ピラミッドは学習指導要領に載っておらず、学校が「勝手に」行っています。
 僕も学校で教えていましたが、学習指導要領に載っていないことを授業で「勝手に」行っていたら、学校内だけでなく、教育委員会からも指導が入ります。
 けれど、何故か行われている。

 そして、学習指導要領に載っていない「勝手にやっている」、この人間ピラミッド、とても重大事故率が高いです。
 参考に2つの資料を載せておきます。
組体操による事故の概要
組体操等による事故の状況

 上に載せた資料をさらっとでも見てもらえば分かりますが、過去には死亡事故も起き、毎年「障害見舞金」を払う事故(つまり「障がい」が残った生徒が出ている)が発生していることがわかりますし、障がいが残らないけれどケガをした生徒でいえば、毎年9千人も出ています。
 こんなにも沢山のけが人を出し、障がいが残る生徒まで出す危険なことを、なぜ国の指針もなく「勝手に」やっているのか、意味が分かりません。

 そして、そもそも日本の公立学校の殆どでは、例えば制服の着用など、あらゆる場面で様々なことを強制されます。
 組体操には参加したくないなど言うことは実質、生徒には出来ないでしょう。

 最終的に成功し大きな拍手が沸き起こってましたが、僕は怒りしか感じませんでした。
 何でこんな危険なことを観ている人たちに拍手してもらうためにやるのか。
 やりたいなら「感動した」とか言って拍手したり、生徒たちに強制参加させている教員がやれば良い。

 成功したんだから、あるいは、けが人いなかったんだから、何グチグチ言ってんの?という反論するかもしれません。
 けど、そもそも「成功したから」「けが人がいなかったから」美談で済んでるけれど、もし、「失敗したり」「けが人が出たら」誰がどうやって責任を取るのでしょうか?
 頸椎を損傷し、首から下を動かせなくなり、車椅子生活を送る生徒に対して、教員や観衆は責任を取れるんですか?
 その生徒が死ぬまで面倒みますか?面倒見られますか?
 そんなの出来ないし、しないでしょう。

 組体操は人間ピラミッドなんかしなくても綺麗に見せる方法はあります。
 それに、今回、息子の通う学校では「男子」だけで「トリ」として行われていましたが、男女混合でもできるものもあります。
 学校が「勝手に」やるのなら、せめて今の最新の情況を学んだ上で行って欲しい。
 それをしないのなら、教員たちは学校で教える立場にいる資格は全くないと僕は思います。