映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

田島列島『水は海に向かって流れる(1)』

 何回か書いていますが、僕が新聞で楽しみにしているのが、1週間に1度載っている書評です。
 僕は朝日新聞を購読しているのですが、朝日新聞だと毎週土曜日の朝刊に書評が載っています。
 そこで紹介されている本をチェックし、文庫や新書、あるいは漫画などだったら手に取って読んでいるのですが、今回はそんな流れで読んだ作品です。
 

digital.asahi.com

 


水は海に向かって流れる(1) (KCデラックス)

 

『水は海に向かって流れる(1)』(田島 列島)|講談社コミックプラス

 

内容紹介講談社より)
「俺がいなければ、この人の肩が濡れることはなかったのに」
高校への進学を機に、おじさんの家に居候することになった直達。
だが最寄の駅に迎えにきたのは見知らぬ大人の女性の榊さん。
案内された家の住人は26歳OLの榊さんとなぜかマンガ家になっていたおじさんの他にも女装の占い師、メガネの大学教授といずれも曲者揃いの様子。
ここに高校1年生の直達を加えた男女5人での一つ屋根の下、奇妙な共同生活が始まったのだが、直達と榊さんとの間には思いもよらぬ因縁が……。
久しぶりに始動した田島列島が自然体で描くのは家族のもとを離れて始まる、家族の物語。

感想
 気になる作品があっても最近は簡単には買わないようにしているのですが(ストレスからネットでポチる傾向があるため)、この作品の著者・田島列島さんの作品『子供はわかってあげない』が印象に残っていたこともあり、すぐに読んでみることにしました。

 まだ一巻目なので今後どういう展開になるのかは全く分かりませんが、物語の内容は、高校進学を機に叔父の家で暮らすことになった主人公直達と、なぜか叔父の家に暮らしている26歳OL榊さん、女装の占い師泉谷さん、大学教授という合計5人の共同生活とそこでのやりとりが描かれています。

 特に榊さんと直達とのやりとりというか、その関係性がこの物語の流れを作っていて、まだ一巻目ですしそれがどういう関係性なのかは是非実際に読んで確認して欲しいのですが、とても羨ましいなと思うのは、色んな人と暮らすというその設定です。

 今でこそシェアハウスなどがありますが、僕の親が子どもの頃(戦争を挟む時代)はこの作品に出てくるような、家族ではない誰かが一緒に暮らすということはよくある光景でしたが、その後は急激に核家族化したので、僕はこういう経験をしたことがありません。
 家族であっても誰か「他者」と暮らす、というのはとても大変ではあるものの、それは人の心にとても重要な影響を与えます(参照:(論壇時評)ひきこもり 孤独は個人の問題ではない ジャーナリスト・津田大介:朝日新聞デジタル)。

 家族ではありましたが、34年間他者と共に生活していましたが、この1年ちょっと1人で暮らすようになって、誰か「他者」と暮らすってとても大切なことだよな、と日々実感しています。
 それは僕だけが感じていることではないからこそ、シェアハウスなども出てきたのでしょうし、僕がまだ小学校に上がる前に訪れていた母方の祖父母の家には沢山の人というか、常に何人かの人が出入りしていて、それが僕にとっては単に懐かしいだけでなく、今ではとても羨ましいなと思っています。