映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界」

 Amazonでの評価が高かったので観てみた作品です。
 で、観終わったあとに記録しようとしたら、5年以上前に観たことがありました…。
 確かに、何となく観たことがあるような気がほんの少しだけしたのですが、はっきりと「あっ、これ見たことあるわ」という先日の 「さよなら、人類」のようなことはなく、最後まで物語に引き込まれながら観ました。
 自分の記録によると最初に観たのが2014年の1月で、ブログにも書いてなかったので、感想を書いてみます。

 


ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界

 
作品データ映画.comより)
監督サリー・ポッター
原題 Ginger & Rosa
製作年 2012年
製作国 イギリス・デンマーク・カナダ・クロアチア合作
配給 プレイタイム
上映時間 90分
映倫区分 PG12

あらすじシネマトゥデイより)
冷戦下の1960年代ロンドン、ジンジャー(エル・ファニング)とローザ(アリス・イングラート)は何をするのも一緒の幼なじみ。思春期を迎えた二人は学校をさぼって宗教や政治、ファッションについて議論し、反核運動に興味を示すなど青春を過ごしていた。しかし、ローザがジンジャーの父親に恋心を抱いたことや反核運動への意見の相違から、二人の友情に溝が広がっていく。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 原題は「Ginger & Rosa」なので、基本的にジンジャーとローザという2人の高校生を中心に物語が展開します。
 高校生くらいの年齢にありがちと言ってしまっては陳腐ですが、社会への興味関心とともに、周囲の人、特に大人の考えからの影響の受けやすさだったり、性への関心と実行や飲酒、喫煙などの「大人」がしていたり、大人だけが許されている行為への興味と挑戦が描かれています。

 自分のことを思い出しても、早く大人になろう、早く大人になりたいと思い、大人への「憧れ」だったり、たとえば喫煙が「格好良い」と思ったりと、いざ「大人」になってしまうとなんでもないことが、そのときにはもの凄い挑戦的でドキドキしたことなどが浮かび上がってきます。
 社会への関心という意味でも、高校3年の時、もの凄くヒマだった僕は(1年生の途中で部活をやめた後は、2年生の終わりまでバイトして、目標だった金額まで貯められたので辞め、受験もなかったので、授業中に小説を読み、家に帰っては借りてきたDVDで映画をひたすら観る日々を過ごしていました)、誰からも頼まれていないのに死刑制度について調べ、(わりとちゃんとした)校内誌に論文的なものを投稿したりしていました。

 ちなみに、その論文(的な文章)、誰の指導もなく、1人で初めて書いた文章だったので、社会科の習ったことはなかったけれど、好きじゃなかった(というか嫌いだった)教員から、「ここまで書くか?」というほど講評でこき下ろされました。
 が、その教員のことが好きじゃなかったのと、僕にとっては誰かに評価されることよりも、何よりも「書いた」「書き切った」ということがその時には一番重要なことで、人生の中で初めて自分で満足感を感じた出来事でした。
(ちなみにその教員、担当していた部活の部費(数百万円)の使い込みが発覚し、学校を解雇され、プライベートでも離婚し、その数年後、確か僕が大学院生の時か何年後かに自死しました。)

 話が映画の内容からかなり逸れてしまいましたが、社会への関心だとか、「大人」的な行為への興味関心だけでなく、実際に実行していく様子がとてもリアルに感じました。
 そして、何と言ってもジンジャーが印象に残ります。
 その存在感の理由は、ジンジャーを演じるエル・ファニングの存在感でもあるのですが、ローザの行動によって、1人孤独を抱え、悩む姿です。
 自分が知ってしまったこのことを打ち明けてしまえば、今のこの大切な人たちとの関係が壊れ、大切な人を傷つけてしまう。
 それが分かっているから誰にも打ち明けることも出来ず、1人悩み、苦しむ。

 そのジンジャーが抱える悩みや苦しみの原因はローザによるものなのですが、このジンジャーの姿を見ると、原題の「Ginger & Rosa」ではなく、ジンジャーに焦点を当てた日本語タイトルの理由が分かるような気がします。