映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

北野詠一『片喰と黄金 1』

 毎週楽しみにしている新聞の書評で紹介されていた漫画です。
 書評に書かれているように、19世紀のアイルランドからゴールドラッシュに沸くアメリカに渡って一攫千金を狙う少女の話です。
 日本に生まれ、21世紀の日本に生きる自分にとって、身近な話とは到底言えないものの、身近ではないからこそ、逆にとても興味が沸きました。

 

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片喰と黄金 (ヤングジャンプコミックス)

 

片喰と黄金/北野 詠一 | 集英社コミック公式 S-MANGA


内容集英社より)
1848年、カリフォルニアで発見された一粒の黄金をきっかけに始まったゴールドラッシュ。黄金発見の翌年、1849年。噂は世界中へ広がり、野心家たちが無名の田舎町へと押し寄せていた──。
同じころ、アイルランドを襲った未曾有の飢饉で全てを失ったアメリアとコナーの貧乏主従も、人生逆転を期してカリフォルニアへ向かう。
大西洋を越え北米大陸を横断する遥かな旅が始まる!

感想
 19世紀のアイルランドが置かれていた状況自体を知らなかったのですが、イギリス(イングランド)からの支配によって、大飢饉に陥ったアイルランド
 食べるものもなく、死者が続出。
 もうこのアイルランドで生きていくことをやめ、ゴールドラッシュに沸くアメリカを目指します。

 1巻目なので、アイルランドからアメリカに到着するまでの様子が描かれています。
 そこで描かれる貧困、人々が死んでいく様子、アイルランド人だと言うことで受ける差別…。

 この作品で描かれている内容は19世紀のアイルランドからアメリカに渡った少女の話で、その時代の様子が分かってとても興味深いのですが、それと同時に感じるのは、決して21世紀の日本に暮らす自分とは遠い世界の話ではないということです。
 何故なら、主人公アメリアが受ける様々な困難は、21世紀に入ってから考えても、アフガニスタンイラク、シリア、ロヒンギャベネズエラなどの人々が今も同じ状況にいるからです。
 食べるものがなかったり、様々な理由で暮らしていた場所にいられなくなり、少しでも希望を持てる国を目指そうとする。
 そこで弱った人だけでなく、遭難などで人々が死んでいく。
 ようやく目指していた国にたどりついたと思ったら、そこでも差別を受けたり、カモにされたり。

 今後の展開は分かりませんが、最初は全く身近とは思えなかったのですが、日本を含め、様々な国や地域で同じようなことが繰り返されてきたし、今も繰り返されているということを気付かせてくれる作品です。

 また、書評に書かれている紅茶文化にいたアメリアが初めてコーヒーを飲むシーンとそこで使われる道具はとても印象に残るものでした。
 僕はカフェインを取らない生活をしているのでコーヒーは飲みませんが、こうやって作られたコーヒーはおいしいだろうな、喫茶店を開くとしたらこうやって丁寧にコーヒーを作るのも良いな、と思いました。