瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』
姫野カオルコさんの『彼女は頭が悪いから』、樹木希林さんの『一切なりゆき』と同じ時に電子書籍だと50%還元セールの対象になっていたので、ポチった作品です。
ちょうど本屋大賞を受賞したときだったのですが、それ以前から各所(主にラジオ)で書評を聞いていて、興味を持っていました。
読んでみての感想というかどうだったかということを先に書くと、この小説を読んで泣きました。
小説で泣いたのは高校生の時に読んだスティーヴン・キングの『グリーン・マイル』以来です(映画もとても良いです「グリーンマイル」)。
(単に年を取って涙腺が緩んできているのかも知れませんが…。それと、僕は小さい時から泣き虫です。)
そして、バトンは渡された
本屋大賞受賞!『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ・著 私には五人の父と母がいる。その全員を大好きだ。 | 特設サイト - 文藝春秋BOOKS
作品紹介(文藝春秋より)
私には五人の父と母がいる。その全員を大好きだ。
高校二年生の森宮優子。
生まれた時は水戸優子だった。その後、田中優子となり、泉ヶ原優子を経て、現在は森宮を名乗っている。
名付けた人物は近くにいないから、どういう思いでつけられた名前かはわからない。
継父継母がころころ変わるが、血の繋がっていない人ばかり。
「バトン」のようにして様々な両親の元を渡り歩いた優子だが、親との関係に悩むこともグレることもなく、どこでも幸せだった。
勝手に五段階評価
★★★★★
感想
最初に書いたように、高校生の時に読んだ『グリーン・マイル』以来、20年近く振りに小説を読んで泣きました。
そもそもタイトルの「そして、バトンは渡された」という意味を分からず読み始めたのですが、読んでいくと徐々に分かるようになっていきます。
文藝春秋のサイトに書いてある内容で既に内容がネタバレしていますが、主人公・森宮優子は様々な「親」の元で育てられてきました。
血のつながった親、そこから様々な親の元で育てられ、そのたびに名字が変わっていく。
親が何年か毎に変わるというと「かわいそう」だとか思ってしまいがちですが、そうではない優子自身が感じてきた想いや感じている想いを、誰にも読みやすい文体で描いています。
優子の目線で物語のほぼ全体が描かれていくのですが、それは決して優子だけの人生を描いたものではないところが、この物語のすごさです。
最初のお父さん(水戸さん)、次に育ててくれた梨花さん、次のお父さんとなる泉ヶ原さん、そして、現在の父親である森宮さん。
それらの親たちの想いや人生も、優子を通しながら丁寧に描かれています。
僕が泣いた点は、その親たちの「想い」が明らかになっていく所です。
僕が親だからでしょうか。
そして、離れて暮らす親だからでしょうか。
さらに、いつ死ぬか分からない病気を患っている親だからでしょうか。
それらの「親」の気持ちが優子のように、僕の子どもたちにも伝わる日が来れば良いな、と。